2020年8月8日(土)
ナカコ 8月8日(土) 20:00
父の伯父は画家だった。1930年代に、絵を学びにパリへ行った。のちに彼は回顧録を書いた。美を見つけることの苦労と、その苦しみ。高校時代、この本は学校の課題図書に選ばれていた。父は高校時代に父親を亡くしたが、その父親のことを私たちに話すことはなかった。私は父の家族についてあまり知らない。
その本を再読した。それによって父の家系は、日本語を専門とする国学者だったと知った。父の祖父は学業に夢中になるあまり、子どもたちの教育をおろそかにした。私の祖父をふくめた子どもたちは、生きるために幼いうちから仕事をしなければならなかった。母親の生まれ育った家庭とは対照的だ。
この画家はまた、人生や絵の探究に苦しんだあと、しばしばスピリチュアルな体験を得て、それを記していた。エンジニアだった私の父は、私のなかではずっと、美やスピリチュアリティについて語るような人からはもっとも遠い存在だと思っていた。人生は謎だ。
エレン 8月8日(土) 20:20
今日は近くの村に住む友人のマリオンと約束していた。2時間語り尽くした。今日もとても暑かった。カフェのテラスにすわり、次々と飲み物をたのんだ。その後川沿いを歩いた。水着をきていなかったので、下着だけで水に入っていくことにした。マリオンはジーンズだけで。
マリオンは私が、東京都写真美術館で見せたスライドショー《Ici-bas》で撮影した人だ。彼女はパン屋で、とてもおいしいオーガニックブレッドをつくる。けれどもマリオンには別な人生があった。彼女は長年、科学、正確には生物学を学び、パリにある国立研究期間(政府の研究施設)で働いていた。そのころ、科学の教師をしていた夫と出会い、昔ながらの生活を営むことになった。生活を変えて、科学を置き去りにして。息子が生まれるとパリを離れ、南西部に引っ越した。そこで、パン屋になろうと決意したのだ。彼らには第二子である娘も生まれた。彼らの子どもたちは、学校に行かない。彼らが家庭で、勉強を教えている。科学を疑問視しているから、学校や昨今子どもたちに与えられている知識にも、疑いをもっているのだ。