She isの更新は停止しました。新たにリニューアルしたメディア「CINRA」をよろしくお願いいたします。 ※この画面を閉じることで、過去コンテンツは引き続きご覧いただけます。

林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年8月)

植本一子さんとのオンライン読書会、一日中Spotifyで音楽を聴いた日

連載:林央子とエレン・フライスのParallel Diaries
テキスト・撮影:林央子、エレン・フライス 翻訳:林央子 編集:竹中万季
  • SHARE

2020年8月14日(金)

ナカコ 8月14日(金) 20:00

今週、オンライン読書会で気づいたことがいくつかある。限られた日のイベントではなく一週間通して行われるため、その間に話題にのぼった本を読み始めたり映画を見たりしている。

齋藤陽道さんとその家族のドキュメンタリー映画『うたのはじまり』を見て、とても感動した。陽道さんはこの読書会の最初の参加者だった。映画を見終わって、その感想や質問を投げかけた。齋藤陽道さんや居相大輝さん、植本一子さんといった人たちは、新世代をひっぱっていく人ではないかと思う。

一子さんのまた別な本を読み始めた。彼女の家族との関係、とくに母親、義理の弟や義理の父親、そして癌になった夫のことを書いた本だ。自分の人生における出来事を書こうとする彼女の勇気は、それを読んだ人の背中を押して、変化のために行動を起こす手助けをする。

エレン 8月14日(金) 16:15

来週の木曜日、オーストリアのウィーンに車で行く。2日がかり、17時間のドライブだ。一緒に行くのは、マーク。6月の日記に、彼のことを書いた。アメリカ人の画家で、私の村に住んでいる。私は彼から絵を買った。彼は、ロサンゼルスから2年前に引っ越してきた。

今日は私の村からウィーンへの旅程を見て、時間を過ごした。フランスを西から東に横切り、ドイツを抜けてスイスにつく。たぶん、バーデン・バーデンあたりで一泊するだろう。ウィーンでは、マリナ・フォーストのところに滞在する予定だ。彼女はアーティストであり写真家でもあり、80年代後半から2008年にマルタンが立ち上げた会社を去るまで、たくさんの写真をマルタン・マルジェラのために撮影した。

マリナにはパリを離れた2008年以来会っていない。私の愛する街、ウィーンには2006年以来行っていない。オーストリア文学はたくさん読んでいるけれど。アルトゥル・シュニッツラー、シュテファン・ツヴァイク、ヨーゼフ・ロートやインゲボルク・バッハマンのように。だからウィーンは私にとって神話的な場所だ。第二次世界大戦のあいだにそれが消失する前の中央ヨーロッパ文化の首都だった。ウィーンはたくさんの美しく古いカフェや、こうした作家たち、または作中人物たちが訪れたカフェが、まだ当時の装飾のまま残っていることで知られる。これは私が最も楽しみにしていることだ。ウィーンのカフェにたたずむこと。

PROFILE

林央子
林央子

編集者。1966年生まれ。同時代を生きるアーティストとの対話から紡ぎ出す個人雑誌『here and there』を企画・編集・執筆する。2002年に同誌を創刊し、現在までに今号を含み14冊制作。資生堂『花椿』編集部に所属(1988~2001)の後フリーランスに。自身の琴線にふれたアーティストの活動を、新聞、雑誌、webマガジンなど各種媒体への執筆により継続的にレポートする。2014年の「拡張するファッション」展に続き、東京都写真美術館で行われた「写真とファッション 1990年代からの関係性を探る」展(~7/19)の監修を勤めた。同展にはエレン・フライスも招聘。現在『She is』『まほら』ほかにて連載執筆中。
Parallel Diaries

エレン・フライス

1968年、フランス生まれ。1992年から2000年代初頭にかけて、インディペンデントな編集方針によるファッション・カルチャー誌『Purple』を刊行。その後も個人的な視点にもとづくジャーナリズム誌『HÉLÈNE』『The Purple Journal』を手掛ける。また、1994年の「L’Hiver de L’Amour」をはじめ世界各国の美術館で展覧会を企画。現在はフランス南西部の町サン・タントナン・ノーブル・ヴァルで娘と暮らしながら、写真家としても活躍している。編著に『Les Chroniques Purple』(VACANT、2014年)、著書に『エレンの日記』(林央子訳 アダチプレス 2020年)。東京都写真美術館の「写真とファッション」展では新作スライドショー《Ici-Bas》を発表。

INFORMATION

連載:林央子とエレン・フライスのParallel Diaries
連載:林央子とエレン・フライスのParallel Diaries
『Purple』『here and there』の編集者が
離れた場所で綴り合う並行日記

vol.1 林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年5月)
vol.2 林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年6月)
vol.3 林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年7月)
vol.4 林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年8月)

林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年8月)

SHARE!

林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年8月)

She isの最新情報は
TwitterやFacebookをフォローして
チェック!

RECOMMENDED

LATEST

MORE

LIMITED ARTICLES

She isのMembersだけが読むことができる限定記事。ログイン後にお読みいただけます。

MEMBERSとは?