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チーム未完成の「働くとは何ぞや」第一回
ゲスト:刺繍作家・小菅くみ

「貧乏でもいいから面白いことやろう」って思う

連載:チーム未完成の「働くとは何ぞや」
インタビュー:チーム未完成(しをりん、ゆりしー、ぴっかぱいせん、ミツコッコー) テキスト:ゆりしー 撮影:ぴっかぱいせん 編集:竹中万季
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どうせ生きてる時間が80年くらいしかないのなら、「貧乏でもいいから面白いことやろう」って。

小菅:そういえば今日、したかった話があって。ビジネスがうまくいってる感じの人から「機械刺繍にしちゃえばいいじゃん」とか「人に頼んで、一針でもくみちゃんが縫えばくみちゃんの作品になるよ」って言われることが、よくあるのね。でも、それって後から自分がすごく虚しくなりそうだと思って。楽にはなるけど、結局お金を儲けて……しをりん今眠いでしょ?

しをりん:(眠そうに)大丈夫。

ぱいせん:いつも飲んでると一度寝るんだよね。

小菅:いや、かわいいなと思って(笑)。だから、お金を上手に儲けることができる人は、その辺が割り切れる人なんだろうなと。私は「手刺繍すごいですね」って言われたときに、「実は他の人が作ってる」とは言えない気がするし、正直に「9割は縫ってもらってる」って言ったとしても、買う人の気持ちはどうなのかなと思うの。

だから「儲けてますか?」って話には「儲けてません」って断言できちゃうんだけど、そもそも儲けたいと思って始めてないしね。結局、儲けてる人は少なからず「儲けたい」と思って始めたんじゃないかなぁ。野心は良いことだけどね。

ぱいせん:こんな暮らしがしたいとかね。

しをりん:うちらもそういうのないもんね。

小菅:「面白いことがしたい」っていうのが大元にある人って、生活はできても結局そんなに儲からない気がする。儲かってる人って、自分の理想は犠牲にして、「本当はこうやりたいけど」っていう部分を他人に任せて上に行く気がするから。大物はみんなそうしているのかもしれないけど、それってすごく虚しいし、悲しいっていうか。

しをりん:超わかる。自分が金持ちになるよりも周りの人に「わーい」ってなってほしい。

ぱいせん:笑ってほしいよね。

小菅:締切りは大変だけど、作ることにやりがいを感じているからこそ、できあがったときも嬉しいし、他の人が全部やってくれちゃってたら、結局そのやりがいも充分に感じることができなくなっちゃうんだろうなって。

ミツコッコー:でも、仕事における「やりがい」の考え方が違うのかもしれないね。お金を儲けることに対するプライオリティが高い人は、儲けることがやりがいなんだと思うし。

ゆりしー:お金を稼ぐことがやりがいに直結してる人もいるものね。

小菅:それは全然悪くないし、人それぞれの考え方だけど、しをりんとゆりしーが「仕事つまんないな」と思って、チーム未完成を始めたのはすごくわかる気がして。どうせ生きてる時間が80年くらいしかないのなら、「貧乏でもいいから面白いことやろう」って。つまんないのは嫌だよね。

クドカンの『ごめんね青春!』(2014年)っていうドラマで、主人公のお母さんが危篤になったとき、「ああ、面白かった!」って言ってぽっくり死ぬのね。もしも自分の親にその状況で「ありがとう」とか言われたら、「もっと何かやってあげられたかも」って気持ちになるけど、「面白かった!」って言われたら、家族もみんな悲しくないし、誰にも迷惑かけないし、それって最高だな、私もそう死にたいと思って。

仕事は人生をかけてやるほどのことじゃないし、それよりも人生の中で「生きていて楽しい」と思うことを見つけたほうがいい。

ミツコッコー:でもこの企画って、そもそも聞き手である私たちチーム未完成自体が、仕事なのかなんなのかフワフワしてる立場だからいいのかも。

小菅:さっきゆりしーが「ブーメラン」って言ってたけど、例えば俄然儲けてる感じの人から「儲けてますか?」って言われたら、「いや、世間的には下のほうなんですけど……」って話になっちゃうなと思って。「儲けてないけど、でも楽しいよね」っていう部分に共感できる人たちだからこそ、この企画いいんじゃないかなぁ。

ミツコッコー:下からだからね。もともとチーム未完成は、みんなが一緒にいるための装置だと思ってるから。仕事になってお金が目的になっちゃうと、バンドとかもアレでしょ?

しをりん:「作詞は俺だろうがー!」みたいな。

「作詞は俺だろうがー!」の図

ミツコッコー:そこがまったくないのが未完成のいいところだと思って。みんなで韓国旅行に行くために「頑張ってシール売ろう」とか、あくまでも自分たちが楽しくやっていくためのいい感じの装置として私は考えてるんだけど、そんな人たちが仕事について話すのってすごい面白いなって。だからこの連載は、未完成がもう一歩先にいくためのステップにもなるし、やっぱり「チーム未完成を仕事にはしない」っていう確認にもなるんじゃないかなっていうのを今日改めて思った。

しをりん:さすが。

ゆりしー:みっちゃんは実はおまとめ上手だよね。

小菅:最近ね、すごく仕事に悩んでて「飛び降りちゃおうかな」とか言う友達がいて、私は「仕事辞めればいいじゃん」って思ったのね。企業に勤めてる人からしたら「ふざけんな」って話かもしれないけど、人生はすごく短いから、自分が楽しいように生きたらいいのにって思う。

「そうもいかないよ」って言われるのがオチだし、それもすごくわかるんだけど、死にたいような気持ちになるくらいだったら、別に仕事は人生をかけてやるほどのことじゃないし、それよりも人生の中で「生きていて楽しい」と思うことを見つけたほうがいい。もしも楽しいと思えることでちょっとでもお金が入ってきて、それを仕事と呼べるなら、そんなに最高なことはないよね。

ミツコッコー:仕事は否応なしに時間をたくさん費やすものだからね。

しをりん:明日死ぬかもしれないし。

小菅:自分が刺繍を7年近く続けているのは、誇りとか自信につながっていると思う。刺繍を始めるまでは、こんなに長く続けてることってなかったから。最近、子供を持ってる専業主婦の友達から「私には何もない」っていう相談を受けたんだけど、子供を育てるのも仕事みたいなものだし、そうやって続けることってただの趣味ではできないんだよね。だから、「仕事とは、ひとつのことを続けているという自信です」って、『情熱大陸』のエンディング的な感じで車を運転しながら言いたい(笑)。

(すかさず『情熱大陸』のエンディングを口ずさみ始めるチーム未完成一同)

夜の学芸大学に消えていく小菅くみさんとチーム未完成たち

小菅くみさんにとって「働く」とは?

「継続して自信ナリ。」 小菅くみ

本日のお会計

合計:10,200円
税別だったことに気づかず、初回から200円オーバー!

内訳。敗因は厚揚げをおかわりしたせいかもしれない。ハムカツがうまかった。
※右側は途中から合流したShe is編集部の飲み代です

今回のお店

やきとん きんか
住所:〒152-0004 東京都目黒区鷹番2-20-19
電話番号:03-3713-5133
学芸大学駅から徒歩2分

厚揚げソムリエ・ミツコッコーの厚ログ

やきとん きんか
★★★★☆ 4.0/絹/個揚

店揚げ系厚揚げ。1カットずつ揚げてあり、見た目はほぼサイコロ。1mm程度の揚げ膜を割ると中は柔らかな絹。半分に割っても水が出ず、最後まで揚げ感を維持。大瓶と一緒にどうぞ。ご馳走様でした!

PROFILE

小菅くみ
小菅くみ

1982年生まれ。刺繍作家。刺繍ブランド『EHEHE』の刺繍を中心とした作品を製作。ほぼ日刊イトイ新聞の“感じるジャム”シリーズでは、ジャムのレシピ製作を担当している。

チーム未完成
チーム未完成

しをりん、ゆりしー、ぴっかぱいせん、ミツコッコーの落ち着いた大人の女性4名によるクリエイターごっこ集団。各々が、写真、デザイン、似顔絵、ライティング(文章)、番組構成、音楽制作、DJ、ガヤなどの一発芸を持ち、2014年夏に渋谷センター街に彗星の如く出現した気でいます。パンと書かれたステッカー、パンのZINE、パンのグッズ、パンのアパレル、パンの楽曲等を次々と発表し、主にアートイベントの賑やかしとして活躍しています。最近、映像制作にも手をつけ始めました。

INFORMATION

連載:チーム未完成の「働くとは何ぞや」
連載:チーム未完成の「働くとは何ぞや」
「どうやって食ってるの?」って人に酒の力を借りてねほりはほり切り込む

第一回ゲスト:刺繍作家・小菅くみ
第二回ゲスト:伊波英里
第三回ゲスト:LIP・田中佑典
第四回ゲスト:とんぼせんせい
第五回ゲスト:エリイ(Chim↑Pom)
第六回ゲスト:犬山紙子

チーム未完成の「働くとは何ぞや」第一回ゲスト:刺繍作家・小菅くみ

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ゲスト:刺繍作家・小菅くみ

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