刹那にさよならしない写真家・石田真澄が光を切り取る理由

刹那にさよならしない写真家・石田真澄が光を切り取る理由

ずっと高校生でいたかった写真家はどの一瞬を捉える?

2018年8月 特集:刹那
インタビュー・テキスト:飯嶋藍子 撮影:小島直子 編集:竹中万季
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「刹那的な美しさ」ってよく言いますけど、それって本当に美しいのかな? って。

大学に入っても「今この瞬間を楽しむということより、高校時代に戻りたい」と思っていた石田さん。昔のほうが楽しかったということを思い出すきっかけになるからと、高校時代の写真を見返すのも避けていたそう。

しかし最近では大学にも慣れ、人との出会いも増え、大学生も意外とおもしろいかもと感じ始めているといいます。そんな中、他人に言われて初めて、自分の写真が「キラキラしている」ということに気づいたそうです。

石田:なんで「キラキラしてる」ってよく言われるんだろうって考えたら、私は光を撮るのが好きなんだなってことに気づいたんです。人を撮るときも、人に当たった光が好きで。たとえば黒髪に光が当たるとちょっと茶色に透けるじゃないですか。そういうのがとても好きだし、光を見て写真を撮っています。

「部活メイト」も光を探すのがとても難しくて。30競技をすごく短い期間で撮影したんですけど、野外競技も多いし、梅雨の時期だったので天候にかなり左右されるんじゃないかと心配でした。

ライティングすると撮られているほうも緊張するし、イメージと違うと思ったので、そのときに綺麗に光が入る場所で撮影を進めました。薙刀部の写真がすごく気に入っているんですけど、体育館の床がオレンジに反射していてすごくきれいじゃないですか? 私も高校時代に同じような写真を撮っていて、「こういう写真が撮りたいんです」って撮影期間中に提案していたんですけど、たまたまその日が晴れて、光の方角が合う窓があって、たまたま屋内競技の薙刀部の撮影があったので、この写真を撮ることができました。

「部活メイト」の薙刀部の写真。条件が揃ったときは「今日いけるかも!」とスタッフが湧いたそう。

仕事で写真を撮る場合でも自分の好きな光を追求しながら撮影しているという石田さん。「自分の作品としての撮影も、仕事としての撮影も、区別しないほうが私にとっても写真にとってもいい気がするんです」と話します。とはいえ、仕事ではさまざまな撮影の注文が入ってくるもの。そんな中、石田さんはどうやって、自然体の表情を引き出しているのでしょうか?

石田:仕事では撮る相手のことを深くは知らないので、自分が撮りたい瞬間のイメージを事前に固めてつくっていきます。たとえば『ゼクシィ』の写真は、この夫婦がこういうことをしていたら自分が撮りたいと思うんじゃないか、というシチュエーションを考えて、撮影時に大雑把に「こういうことしてください」と伝えました。たとえば「飛んでください」とか(笑)。どういう飛び方かまで言わなければ、その人のオリジナルの飛び方になるから。

一般の方を撮ることがすごく多いんですけど、一般の方はやっぱりカメラに緊張してしまうので、こちらからお願いしてなにかしてもらったほうが、楽しそうにしてくれるんですよね。撮られているっていうことを忘れたほうがいいし、ふたりだけ、っていう関係性が見える空間をつくり出したいと思いながら撮っていました。

この写真の撮影時には、「体育でやったアレやってください」とお願いしたそう。

石田さんがつくり出した空気の中にいる人々は、気にもとめないような一瞬の温かさが写し出された写真たち。そのなんでもない刹那に差し込む光が、特別じゃない記憶すらも永遠にしてくれているのかもしれません。

石田:よく「刹那的な美しさ」とか言いますけど、私はその言葉に疑問を感じていて。一瞬であることは美しいかもしれないけれど、私にとってはもうすぐ消えてしまう悲しさが勝つんです。だから、映画のレビューや小説でもその言葉が出てくると、「それって本当に美しいのかな?」って思います。それくらい敏感になってしまう言葉だなって。

太陽の光、青いもの、水。意図的に夏を撮ったというより、好きなものを集めたら夏だったんです。

「刹那」という言葉への考えから、「すべての瞬間を覚えていたい」という石田さんがシャッターを切り続ける理由や、一貫した美学が見えてきます。そんな石田さんが逆に「永遠」だと思うことはなんなのでしょう?

石田:なにかを好きっていう気持ちや熱量は永遠に変わらないです。「好き」の矛先がどんどん変わっていくだけで、この気持ちだけは刹那的じゃないと思います。

今の一番の「好き」の矛先は、写真に向いているという石田さんがShe isとつくったパラパラ写真集『afterglow』には眩しい太陽やペットボトルから吹き出すしぶき、波のきらめきなど夏の風景がぎゅっと詰まっています。しかし、石田さんから発せられたのは「私、実は夏が好きじゃなくて(笑)」という意外な言葉。

石田:暑いし、日焼けしやすいし、とか単純にそういう理由で苦手なんですけど……。でも、夏はほかの季節より始まりと終わりが明確だから刹那をすごく感じます。みんなが「平成最後の夏」って言っているのを聞いて、みんなそんなに夏が好きなのかな? なんでそんなに夏に敏感なんだろう? と思っていて。でも、夏の終わりに気づいたときに、「平成最後の夏」って言われると落ち着かない気持ちになりました(笑)。

石田真澄さん『afterglow』より

光の印象があるからか、石田さんが夏を好きではないとは予想外。でも、まわりからも「夏っぽい写真だね」とよく言われる、と石田さんは笑います。

石田:私の好きなものが、太陽の光、青いもの、水なんです。その3つが合わさると夏になってしまうっていうことにも、まわりから言われて気づきました。意図的に夏を撮ったというより、好きなものを集めたら夏だったんです。この作品の写真は夏の始まりのある1日に撮ったんですが、早起きして鎌倉の海に行った後、公園で友達に三ツ矢サイダーをぶちまけてもらったり、花火をずっと持ってもらったりして(笑)。

映像作品を見るのも好きなので、今回のパラパラ写真集というかたちは、従来の写真と映像の間くらいのものがつくれそうだなと思いました。どの写真を選ぶかとても迷ったんですけど、その組み合わせによって作品ができあがっていくことにすごく興味があったのでおもしろかったです。

写真集となると本棚から取り出して見る感覚があるんですけど、『afterglow』は机の上に置いてふとしたときにぱらぱらと見たい作品になりました。気軽にも見られるし、じっくりも見られるものになっているんじゃないかなと思います。

石田真澄さんのパラパラ写真集『afterglow』はShe isの8月のギフト「刹那」でお届け

まさに「平成最後の夏」が目の前を横切っていくような『afterglow』。わたしたち一人ひとりの中には、これまで確かに抱きしめてきた出会いや別れ、走り抜けてきた時間の粒がたくさん転がっています。石田さんの写真を見ると、まるでその粒がどんどん繋がって、記憶に色彩が戻って来るような感覚を覚えるのではないでしょうか。

今この瞬間も過ぎていく目の前の景色に光を当てることができれば、それは輪郭のある記憶となってあなたの中できらめきを湛え続けます。だから、終わりや別れに悲しさを覚えてもきっと大丈夫。祝福すべき次の季節や出会いが、すぐそこに待っているから。

写真集が入っている8月のギフト「刹那」のページはこちら(お申込みは8/31まで)

PROFILE

石田真澄
石田真澄

1998年生まれ。
2017年5月自身初の個展「GINGER ALE」を開催。2018年2月、初作品集「light years -光年-」をTISSUE PAPERSより刊行。雑誌や広告などでも活躍の幅を広げる。

INFORMATION

イベント情報
石田真澄さん(写真家)×岡本仁さん(編集者)
「Talkinbout Photography vol.8」

2018年9月16日(日)
会場:東京都 SPBS本店
時間:10:00~11:30(開場9:30)
料金:1,500円(税込)
石田真澄さん(写真家)×岡本仁さん(編集者)「Talkinbout Photography vol.8」 | SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(SPBS)

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