運命、と聞くとなんだかとても大きな波のようなイメージがあるかもしれません。想像していた以上の素敵なものにも思えるし、決して力の及ばない悲しいもののようにも思えます。
She isでは1月の特集「ハロー、運命」のギフトでお送りするオリジナルプロダクトとして、文筆家のきくちゆみこさんといっしょに、綿100%の優しいストール「いっときでもじゅうぶん、一生ぶんになるストール」と、きくちさんの言葉が散りばめられた、虹色にかがやくステッカーをつくりました。
日本で大学を卒業してから4年間ロサンゼルスで生活し、やむを得なく帰国した27歳の頃。そこが転機となり、きくちさんは運命に対する考え方が変わっていったといいます。幼少期から抱いていた違和感、夫である成重松樹さんとの出会い、お子さんのオンちゃんの誕生など、さまざまな点がつながっていくなかで、きくちさんはいま「運命」をどう捉えているのでしょう? ストールに込めた思い、そして運命との付き合い方について聞きました。
後編「きくちゆみこが考える、運命をすこし動かすコミュニケーション」 ※She is Members限定記事
ストールとステッカーが入っている1月のギフト「ハロー、運命」のページはこちら(お申込みは1/31まで)
運命を感じるのは、いつも過去になってからのような気がします。
きくちさんの書かれる言葉には、運命めいたものや目に見えない力に少しわくわくするような表情が見え隠れしています。きくちさんはどういうときにそういうものに導かれていると思うのでしょうか?
きくち:みんなよく「これ運命かも!」って言うじゃないですか。私にとって、本当に運命を感じるのはすべてが終わったあと、いつも過去になってからのような気がします。「このときこれがあったからいまの私がいる、っていうことは、これが運命なんだ」って思うようになりました。それは35歳っていう年齢も大きいと思うんですよね。
たぶん20歳の頃は気づけていなかったんだけど、35歳になって、人生の節目にいろいろな人と出会ってきたことで、自分の人生を周期的に見ることができるようになったから気がついたのかも。それってときめかないかもしれないし、わくわくする話じゃないかもしれないけど、いまという瞬間は、その瞬間に取り込まれていくだけな気がするから、いまそのときは起きたことに意味づけをすることってすごく難しいと思うんです。
運命はいまではなく過去にある、そう気づくようになったのは27歳のときに経験したある出来事がきっかけだそう。
きくち:全部の節目が27歳に集中しているんです。日本の大学を卒業してから4年間、ロサンゼルスにいたんですけど、その年に日本に帰ってきて。本当はずっとアメリカに住もうと思っていたんだけど、人間関係でいろいろ大変なことがあって逃げるように帰ってきたんです。
当時は感じていなかったけど、あとから振り返ると、そのときから人生がガラッと変わったし、いろんなきっかけにも気づけるようになったなって。それまでの人生では、運命とか奇跡とかスピリチュアリズムとかについて考える余裕がまったくなくて、「なんのために生きているんだろ」ってずっと思っていたんです。
激しい波に飲み込まれて、はじめてその波を受け入れようって思った。
子どもの頃から地元に馴染めず、学校に行けない時期もあり、大学を出てからも「みんな働いているのに、自分がどこかに就職するイメージが全然わかないことが苦しかった」と、どこにも自分の居場所がないように感じていたきくちさん。幼い頃からの違和感も27歳頃から少しずつ解けていったそうです。
きくち:自分のお役目とか、自分がなにをして人とつながる人なのかわからなかったし、好きなことはあるけど、それは人とのつながりを生まないものだって思っていて。でも、Tumblrで文章を書き始めたり、27歳になってZINEをつくり始めて、自分が発信するものによって、人と出会うことになったし、コミュニケーションをとれるようになったんです。それで、居場所って別に無理につくらなくてもいいんだなって思いました。自分がただここにいるだけで、勝手に居場所になってしまっているんだから、っていうことに気づいたんです。
違和感や苦しさを感じ続けることはもちろん、なにかが劇的に動くときの心の痛みや変化の波に激しさに、運命を呪うこともあるのではないでしょうか。「私も変化の波に飲み込まれていました」と、きくちさんもロサンゼルスでの人間関係を振り返ります。
きくち:とってもしんどかったんだけど、いま思えば、自ら大変な状況のところに行っていたし、たぶんしんどい自分を経験したかったんだと思う。そういう激しい波に飲み込まれて、はじめてその波を受け入れようって思いました。「人生には渦があるんだ。自分を巻き込んでくれるものがあって、それに逆らわないでもいいのかもしれない」って考えられるようになったんです。
ロサンゼルスでの生活も、日本に帰ろうと決めたのも、自分からなにかを取りにいっている感じがどこかにあったんです。でも、よく言われるように、本当にすべての出会いって重要なんですよね。そのなかの一つが、夫の松樹との出会いだったりもして。
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