靴下が願いを叶えてくれるのではなく、自分でそういう靴下を選んで履いてるから、気持ちが変わる。
「よそおい」にはいろいろな意味があります。服を着ること、着飾ること。小谷さんも、はじめはその印象があったといいますが、She isと一緒にラメソックスをつくることになったとき、「なにかのフリをする」という意味があることにも気づき、それは必ずしもは悪いことではない、と思い至ったといいます。そんな小谷さんは、ラメソックスにこんな思いを込めていました。
小谷:私は今、この仕事ができていて、嬉しいし楽しいし、こんなに多くの人に「好きです」と言ってもらえる機会があることを、心から感謝することばかりなんです。
でも、モデルはイメージを伝える仕事だし、SNSの写真も結局データだから、明日になったらなくなるかも、全部嘘だったらどうしようって思うこともあって。だから、なにか物体としてかたちに残せること、自分の気持ちがこもったものが、誰かの手にちゃんとわたることがいちばん嬉しいです。
「いろんな人に履いてほしいから」という思いから、シンプルなデザインながら、それぞれのカラーには、日々の気持ちの支えになるような優しいメッセージが込められています。
小谷:靴下って、足首が出ていないか、すごく派手なものじゃないかぎり、そんなに他の人からは見えないじゃないですか。そう考えると、自分の足元を見るのは自分がいちばん多いから、靴を履くときや電車に乗っているとき、そういうひとときにほんとにかわいいなって思える存在になったらいいなと思ってつくりました。
このなかでいちばん派手なワインレッドは、誰から見られても気分を上げたい日なんだなって思ってもらっていいような靴下で、「わかりやすいほどに気分をぐんと上げていきたい」っていう色。
ピンクベージュは、肌と一体化するくらいすごく自然な色なんですけど、よく見たら実はちゃんと光っていてキラキラしているから、自分のなかで「誰にも知られずに静かに燃えていたい」ときの色です。
最後に色を決めた水色は、悲しみに打ち勝ちたいときの、「気だるさや涙をさっぱり洗い流したい」靴下です。
そういったストーリーを描きつつも、「人によって受け取ってくれる意味は違っていいなと思っています」と小谷さん。
小谷:もしかしたら誰かにとってはピンクベージュが、気分がぐんと上がる色になるかもしれないですよね。それは人それぞれでいいと思う。「なにかのフリをしてもいい」という話をさっきもしましたが、私は「今日はこういう日にしよう」と思って靴下を選ぶときがあって。
だからそういう意味で、靴下が願いを叶えてくれるのではなく、自分でこの靴下を選んで履いてるから、気持ちが変わるんじゃなかなって。今日一日を自分でどうにかできるって思えるきっかけになる靴下になればと思って、「見せかけじゃなくて本当にするラメソックス」って名前にしたんです。「本当にする」というときの「する」の主語は靴下じゃなくて、自分なんですよね。
服を着ることの手前にある、もっと大事なことを考えたらいいんじゃないかなと思います。
小谷:なにを着たらいいかわからないっていう相談をもらうことがよくあるんですけど、服を着ることの手前にある、もっと大事なことを考えたらいいんじゃないかなと思います。まずはなりたい自分を考えること。
なりたい自分って、たぶんその人が好きな自分の姿だと思うんですよね。それを見つけるのが近道だと思っていて。まずは憧れの人を見つけたり、好きなものの要素を服に投影するのでもいいと思う。私はずっとそうやってきました。
仕事柄たくさん服を着てきた小谷さんは「私もこの仕事じゃなかったら、服選びに悩んでいるかも、とも思います」と続けます。
小谷:一度試着してみて、自分がなしって思ったものはもう絶対になしだし、ありって思ったら次は買って外に出てみよう、みたいな段階を踏むのもいいと思います。それで他人になにか思われたときの気持ちと、自分がそれを着て「いいじゃん!」って思ったときの気持ち、自分にとってどちらを大切にしたいかですよね。そのバランスを見極めるのは大事だと思います。
私もいいと思って買ったのに、改めて見たら全然よくなかったっていう失敗も何度もありますし、まずは自分の好きなものを手にとって、着たい服をどんどん着てみたらいいと思います。
あと、私が着ていた服とまったく同じものを着たいと言ってくれることもあって、それは自分が服をよく見せられてるんだって思ってとても嬉しいけど、たとえ同じ服を着ても、私とは違うその人だけのよさが絶対に出てくるものです。モデルという仕事を通して、服を選ぶときにそういう力添えができたらいいなと思います。
好きなものや憧れるものの要素を、少しずつ取り込んで自分流にコラージュしていけば、きっと自分だけのよそおいが紡ぎ出されていくのでしょう。小谷さんが伝えるように、「どんな自分をいいと思うのか?」という気持ちの大きさのバランスに耳を澄ませながら、あなただけの「よそおいの姿」を探してみてはどうでしょうか。
- 3
- 3