日本のホテルシーンを残すために、自分たちだけではなくさまざまなホテル事業者と連携。点ではなく面として新しい需要を掘り起こす
―「ホテルシェルター」は、もともと自分たちが運営するホテル以外も加盟することを視野に入れたうえでの計画なんですね。
龍崎:いまは、観光業という大きな産業が一気になくなっている状態で。新しいニーズを掘り起こしていかないかぎり、復活することが難しい状況ですけど、それってどこかのホテルが独自でどうにかできるものではないと思うんです。だから、さまざまなホテル事業者さんと連携して、点ではなく面として新しい需要を掘り起こして、社会の新しいインフラになっていくような取り組み方をしないといけないと思っているんです。
―「未来に泊まれる宿泊券」も、自社のホテルだけではなく、ほかの宿泊施設の宿泊券も提供されていますね。
龍崎:いままで「ホテルの宿泊券を買う」という文化がなかったなかで、私たちだけが頑張って売るよりは、たくさんのホテルさんたちと一緒にこの宿泊券を販売することで、ホテルを応援したり、未来の旅行を計画する行為が身近になる方が、みんなにとって良いことに繋がると思うんです。あとは、最近やっとホテルシーンが面白くなってきたところだと思っていて。素敵なホテルがたくさんできていて、自分も行きたいけれど行けていないホテルがたくさんあるので、この不況をきっかけに閉めてしまうホテルがあったらすごく悲しい。日本のホテルシーンを残したいという思いがあるから、やっているところがあります。
最初から壮大なプロジェクトを描くのではなく、一週間で実装できる小さなプロジェクトをつなげて、最終的に一つの大きなプロジェクトに
―現在は「ホテルシェルター」として自社ホテルを提供しているかと思いますが、どれくらいの人数でホテルを運営されているのですか?
龍崎:基本的には休業状態なので、ほとんどの従業員がリモートワークです。ホテルには、つねに一人はいて、連絡などに対応しています(※取材当時。現在は6/1より営業再開しています)。
―皆さんがそれぞれリモートで働いていることで、プロジェクトを進めるにあたって大変だった面などはありましたか?
龍崎:私たちはスタッフの拠点がもとからすごくばらけているんです。なので、もともと打ち合わせは基本的に全部テレカンだし、コミュニケーションもSlackで行なっていたから、コロナの件でリモートになったことでの変化は、個人的には正直感じなかったです。角田さんもきっとそうですよね?
角田:はい。
合田:私も直接会うことが減った以外は、あまり変わりないです。
―リモートになってから、特別に始めたことなどはありますか?
龍崎:毎週、社員全員でリモートでご飯を食べる会をやっていることですね。Googleフォームでメッセージを集めて、MC役の人がラジオみたいにお便りを読み上げるんです(笑)。
―楽しそうですね! 基本的に大きな変化はないものの、実際に会うことができない分のコミュニケーションを補う工夫をされているんですね。チームで「ホテルシェルター」のプロジェクトを進めていったなかで、気づいたことなどがあれば教えていただけますか。
角田:状況がするする変わるので、一度つくった大枠の仕組みを、その後のミーティングを受けてつくり変えるようなことがわりとありました。かなりフットワークを軽めに考えていないと、置いていかれそうな感覚でした。
龍崎:そうですね。短距離走的に細かくゴールを設けて進めないと、すぐにニーズが変わってしまうし、自分たちも辛いうえに、経営的にも割りに合わなくなってしまうんですよね。だから、最初から壮大なプロジェクトを描くのではなくて、一週間で実装できる小さなプロジェクトをつなげていって、最終的に一つの大きなプロジェクトになるような進め方をしています。
具体的には「未来に泊まれる宿泊券」を発表して、そのあとに「ホテルシェルター」の大枠のビジネスモデルをつくって世に出して、それからガイドラインをつくって、実際に「HOTEL SHE, OSAKA」で「ホテルシェルター」を運営するというプロジェクトが複数動いていました。そうやってちょっとずつプロジェクトを刻んで、都度軌道修正しながら進めてきたんです。それぞれのプロジェクトに独立している部分があることが、大事だったのかなと思います。状況が変わりやすいタイミングなので、そうした機動力が必要な気がします。
SNSのフォロワー以外にも広く届けるために、ストレートな広報を意識
―大きな構想を描きすぎて一歩を踏み出せないことって、普段からある気がします。そうした考え方は、何をするうえでもすごくヒントになる人が多いんじゃないかなと思いました。
龍崎:ちなみに「ホテルシェルター」以外にも、社内では同時に大小10個くらいのプロジェクトが進んでいるんです。変化が激しい状況だからこそ、小さなプロジェクトを確実に回していくことが、キャッシュポイントを稼ぐうえでも大切だと思っています。一方で、私のTwitterアカウントなど、一つのメディアが出せる情報量って限られているので、いろいろなことをたくさんやっても情報が混雑しすぎて、打ち消しあってしまって。そこは反省点ですね。
―社内のプロジェクトについてはすべて合田さんが束ねて広報されているのですか?
合田:メディア対応は私が一人でやっているんですけど、情報を届けるための発信の仕方については、龍崎さんや角田さんはじめ、ほかのメンバーと一緒に決めています。
―「ホテルシェルター」の場合、普段からみなさんのホテルでの宿泊体験を求めて来る方やSNSのフォロワーの方たち以外にも情報を届ける必要があったと思いますが、情報の発信の仕方についてはどんな工夫をされましたか?
角田:「ホテルシェルター」に関しては、僕と合田さんで一緒に発信をさせていただいたんですけど、広く届けるために、わりとストレートな広報をしましたね。僕らは、普段SNSでお客様とつながることを大事にしているので、たとえば新しいプランができたときなどには、SNSを通じて直接お客様に情報を届けられていたんです。でもおっしゃる通り、今回届けるべき相手はいままでのお客様だけとは限らなかったので、とにかくメディアの皆さんに知ってもらうための広報を中心に、たとえばPR TIMESで幅広くリリースを出したりしました。
合田:一番大きな変化としてはPR TIMESかなと思います。いままで使ったことがなかったので。
角田:PR TIMESに載せるとこんなに見てもらえるんだ! っていう発見がありました。いままで人力でメディアにコンタクトしていたので(笑)。
合田:取材依頼をいただくメディアの系統も変わったように思います。ビジネス寄りのメディアなど、いままでは取り上げてもらえなかったようなところからコンタクトがあって、多くの方に届いたのではないかと思います。