誰かの生きる姿勢や活動を見て、思わず応援してしまいたくなったことは、ありませんか。その相手は身近な人だったり、手の届かない距離で輝く存在だったり、さまざまだと思いますが、応援したり、されたりすることは、お互いに少なからず力を分け与えあって、日々の足取りを軽やかにしてくれる糧になるもの。
She isとネスレ日本“キットカット”によるコラボレーション企画<わたしが応援するあの人たち。そこから生まれる景色。>では、She isのGirlfriends8名が、応援したいと思う個人を紹介。それぞれが、同じ時代に、共に頑張りたいと思える人たちと対話を行なっていきます。
連載最終回となる今回登場してくださったのは、コラムニストの山崎まどかさん。『アメリカン・スリープオーバー』『タイニー・ファニチャー』をはじめ、日本未公開の映画を中心に上映・配給などを行ってきた「Gucchi's Free School」の降矢聡さんと、She isの運営母体であるCINRAに勤めながら、独自の視点で選んだ上映機会の少ない映画を上映するイベント「肌蹴る光線 ―あたらしい映画―」を主催する井戸沼紀美さんとともに、映画や自主上映を巡ってお話していただきました。
山崎さんについて、「好きなものを追い求めるお手本のような存在」だと話す降矢さん。山崎さんの活動を尊敬し、また降矢さんの活動が自分でも上映会を開く励みになったという井戸沼さん。そんな降矢さんと井戸沼さんの活動に魅力を感じ、継続してほしいと願っている山崎さんと、まさに応援しあう関係にある三名。
愛の対象に出会えたときの幸福感や、自分の心を暖めたものが誰かの心にも火を灯す柔らかな希望の瞬間。そうした環を閉じずに広げていくことの豊かさについて、映画に寄り添いながら活動を続けてきた三名の、幸福な循環を感じる対話となりました。
自分が好きなものについて誰かと話し合うことや、追い続ける楽しさを教わって、似たようなことを自分でもやってみたいと思ったんです。(降矢)
―山崎さんとお二人はどのようなつながりなのですか?
山崎:Gucchi'sさんとは、東京藝術大学で行われた『アメリカン・スリープオーバー』の上映会のトークイベントに出演させていただいたときからお付き合いがあって。肌蹴る光線には去年、『JOHN FROM』が上映された際のトークに招いていただきました。二人とも映画に対しての愛を持って活動されているところが素敵だし、Gucchi'sさんの『USムービー・ホットサンド』刊行記念上映イベントにShe isの二人が出ていたり、井戸沼さんもShe isの二人と親しい関係で、She isともゆかりがあると思って今回お声かけしました。
井戸沼:山崎さんのトークによって、自分の知らなかった扉が開く体験をされた方がたくさんいらっしゃったと思います。私はGucchi'sさんの上映会の際に、一番前の席で山崎さんのトークを拝見していたんですけど、山崎さんがステージから降りられるときに、その時点では面識がない私に向かって、さりげなく一礼してくださって。きっと普段から自然にそうした行動をとられているのだと思って、もともとファンだったんですけど、もうめろめろになってしまったんです(笑)。絶対に自分の上映会にも来ていただきたいと思ってお声がけしました。
山崎:個人の上映会って、主催者はもちろん、その場所に来ている人たちも特別な思いを持っていることが多いので、そうした場に呼んでもらって関われることは本当に嬉しいんです。Gucchi'sも肌蹴るも、それぞれ推したい映画の傾向がはっきりしていますよね。好きなことを一生懸命に推す姿勢ってすごく大事だと思っています。
降矢:僕にとっては、好きなものを追い求めているお手本のような存在が山崎さんです。長谷川町蔵さんと書かれた『ハイスクールU.S.A.―アメリカ学園映画のすべて』などを通じて、学園映画の深さや、一つのジャンルに対してさまざまな語り方ができることを知りましたし、自分が好きなものについて誰かと話し合うことや、追い続ける楽しさを教わって、似たようなことを自分でもやってみたいと思ったんです。だから、Gucchi'sとして最初に上映した『アメリカン・スリープオーバー』では、山崎さんにトークで出ていただきたいと思いましたし、山崎さんのいまの言葉はすごく嬉しかったです。
―いわゆる「大作」ではない映画に対して敷居が高いと感じている人もいるかもしれないと思うのですが、「Gucchi's Free School」も「肌蹴る光線」も、イベント名の語感がすごく魅力的で。そこで何か素敵なことが行われていると予感させる映画鑑賞の入口になっていると感じます。
山崎:キャッチーな名前によって行ってみようと考える人はいると思うし、Gucchi'sも肌蹴るも、ある種のブランドのようになっていますよね。
降矢:一緒に活動している樋口くんと中学からの友達で、彼が当時美術の授業で「Gucchi's Free School」という架空の学校を描いていて。そこから名付けたんですよね(笑)。それで、自分たちを「校長」「教頭」としたり、イベントも「学園祭」としてみたり、学校というモチーフに寄せていっていて。そういうふうに、上映会に対する敷居を低くすることはすごく意識しています。上映会が一部のコアなファンのためだけのものになってしまうと、どんどん内に入ってしまって、シーンが狭まってしまうと思うんです。だから上映会の際のトークイベントでも、映画以外の場所で活動されている方にゲストとしてお声がけすることが多いです。
2016年に開催した『青春映画学園祭』の予告ムービー
井戸沼:私も自分の趣味だけで突き進むと、すごくニッチな感じになってしまうので、たとえばリリー・アレンの楽曲が使用されている『JOHN FROM』やFlying Lotusが音楽を手掛けた『あまりにも単純化しすぎた彼女の美』のように、映画ファン以外への目配せができるような要素も上映作品を選ぶうえで考慮しています。降矢さんと同じく、ゲストの方をお呼びするときも、山崎さんのように映画以外のジャンルにもファンがいらっしゃる方や、祖父江慎さんのようにほかのジャンルで活躍されている方をお呼びすることを心がけています。
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