mixiで漫画をアップして見てもらうことで快感を得ていたので、人に見せるのは全然怖くなかった。仲間がいたのも続けられた要因だと思う。
ゲッツ!:話を戻すと、介護の時間をぬって漫画を描くのってすごく大変だと思うんです。もっとダラダラしたり飲んだりしたくなりそうなところを創作に当てていたんですね。
犬山:漫画家になるっていう目標があったので。私自分の下ネタ大好きだったし。
未完成:(笑)。
犬山:自信を持って下ネタをずっと描いていて。描いている間「最高! 超天才!」みたいな気分で、超気持ちいいんですよ。
しをりん:じゃあ自分を追い込んでいたわけじゃなくて、楽しんで描けていたんですね。
犬山:溜まっているものを下ネタで発散! みたいな。今読むとだいぶひどい漫画なんですけど、当時は本気で「私これでお金稼げる!」と思って描いてた(笑)。
ゆりしー:でもその自分を信じる力って創作を続ける上でめちゃくちゃ大事だと思います。パン投げて写真撮るのも「さむいんじゃないか」って思ったら終了だし。私たちの場合は、4人でやってるから「面白いね」とか言い合うことで盛り上がって続けてこられたけど。最初に自分が描いたものを公開したり、人に見せるときって怖さみたいなものはなかったですか?
犬山:もともと、mixiで漫画をアップして見てもらうことで快感を得ていたので、それは全然怖くなかった。仲間がいたのも続けられた要因だと思う。
夜、星空の下で犬の散歩をしながら「こんなメールがきた! 夢が叶いそう!」ってすぐにお姉ちゃんに電話をしました。
ゆりしー:ギャグ漫画を描いていた、聖モチ先生時代から現在のイラストエッセイというスタイルに行き着いたのはどういう経緯だったんでしょうか。
犬山:一度、メジャーな少年誌で担当さんがついたんですよ!
ゆりしー:すごい!
犬山:それで担当さんから、賞に出すために漫画を描くように言われて。一生懸命完成させて応募したら、「この内容は女性誌向きじゃないですか?」っていう身も蓋もない結果で(笑)。担当さんもフェードアウト(笑)。
そして漫画を描くのは本当に大変なんですよね。当時はアナログの時代だったから、パースを取るのもトーンを貼るのも、全部手作業でとてつもない労力で。「漫画を完成させることのできる人偉大すぎる……私みたいな怠け者に漫画を描き続けるのは無理では……」と思って逃げて。でも、絵を描くことは好きだし、編集者時代の経験もあって文章を書くのも好きだった。
そんななか、イラストエッセイを書いている友達に勧められたこともあって、自分でもイラストエッセイという形式で書いてみたらめちゃくちゃしっくりきて、ブログで公開しはじめたんです。ブログを書き始めた頃、青山のクラブに遊びに行ったら、すごく変なナンパをしている男性がいて。女の子にずっと付きまとってるから「何やってるんだろう」と思って見てたら「俺、セックス好きだよ」みたいなことをずっと言ってて。
しをりん:だいぶダイレクトな(笑)。
ゆりしー:それでついて行く人っていないのでは……。
犬山:その人のことをフェイク入れながらブログに書いたら、拡散されて。ちょうどみんながTwitterを使い始めたような頃で、当時は「バズる」っていう言葉もまだなかったけど、そのときに初めて拡散というものを体験して。それをきっかけに自分の書いたものに読者がついたんです。
しをりん:その現場にいなくても「私もそういう経験ある」っていう、共感が得られやすい話かもしれないですよね。
犬山:多分、Twitterをやっている人とすごく相性のいいネタだったと思うんです。あと、今でこそ面白いイラストや漫画のブログがいっぱいあるけど、その頃ってイラストエッセイブログはあんまりなかったんですよ。
ゆりしー:ブルーオーシャンだったんですね。Twtterでバズる経験をして、すぐにお仕事に繋がったんですか?
犬山:そこから1年くらい書き続けたかな。作家になりたいっていう夢は諦めてなかったので、作家になるための手段としてブログを更新していて。だんだん、人が読んでくれるネタと、読んでくれないネタ、自分がすごくノって書ける内容とちょっと苦手な内容がわかってきたりしました。そうするうちに、ある日フリーの編集者さんからメールがきたんです。今でもそのメールを覚えてます。夜、星空の下で犬の散歩をしながら「こんなメールがきた! 夢が叶いそう!」ってすぐにお姉ちゃんに電話をしました。それから『負け美女 ルックスが仇になる』という初めての本が出版されたんです。
しをりん:その頃はまだご実家にいたんですよね?
犬山:その頃私は、月に20日間実家で介護をして、10日間東京に出てきて思いっきり遊ぶという生活をしていました。兄弟が3人いたので、私が東京にいる間は兄弟が介護をして。この仕事を始めてからも妊娠するまでは、ずっと東京と仙台を行ったり来たりしていましたね。