誰かの生きる姿勢や活動を見て、思わず応援してしまいたくなったことは、ありませんか。その相手は身近な人だったり、手の届かない距離で輝く存在だったり、さまざまだと思いますが、応援したり、されたりすることは、お互いに少なからず力を分け与えあって、日々の足取りを軽やかにしてくれる糧になるもの。
She isとネスレ日本“キットカット”によるコラボレーション企画<わたしが応援するあの人たち。そこから生まれる景色。>では、She isのGirlfriends8名が、応援したいと思う個人を紹介。それぞれが、同じ時代に、共に頑張りたいと思える人たちと対話を行なっていきます。
責任編集を務めた『エトセトラ VOL.3』で「私の 私による 私のための身体」という特集を組んだ、美容ライターの長田杏奈さんが、共に語り合う相手として紹介してくれたのは、産業医として働きながら、同じく医師である夫のたかおさんとともに「アクロストン」として、ワークショップなどを通じて子どもたちに性に関する知識を伝える活動をしているみさとさんと、セクシャルヘルスやセクシャルウェルネスにまつわる商品を扱うLOVE PIECE CLUBで働きながら、「フェミニズム」と「クィア」を軸にしたウェブメディア「ユニコーンはここにいる」を友人たちと立ち上げた、杉田ぱんさんです。
三人に共通しているのは、誰にとっても等しく個人的なものであるはずの「身体」というキーワード。正しい知識を学ぶこと、言葉を得ることが人を自由にすること、教育への問題提起、疑問や怒りを抱いたときに声をあげることの大切さなどについて、たくさんの意見が交わされました。
<もくじ>
p1.性教育は、セックスや生理についてだけの話じゃないと広めたい/ルッキズムと、視覚から得られるものを大切にすること。そのふたつをごっちゃにして語らない
p2.日本は子どもの権利がもっと尊重されていい/日常の違和感に声をあげる方法は? 怒る、そして誰かが怒ったときに聞く練習をする
p3.自分を大切にすること、多様性、ジェンダー、セクシュアリティ。それらについてもっと一緒に考えたい/価値観がアップデートされる新しいワードがほしい
性教育は、セックスや生理についてだけの話じゃないということを広めたい
―この連載は「応援」をテーマにしているのですが、長田さんは美容を通じて、ひとりひとりが心地よく生きる術を伝えることで、たくさんの人を応援されてきたように思います。
長田:女の人が自分を大切にする気持ちを応援したいと思って活動してきたんですけど、その過程でせっかく育まれた気持ちが折られてしまうケースがあるな、と感じて。悔しくて原因をたどっていくと、「女性は“普通は”こうである」という嘘の前提に、大切な身体やセクシュアルなことを無理に当てはめなきゃいけない状況が多発していることに気づいたんです。だから、自分が責任編集を務める『エトセトラ』では身体をテーマにしようと思って、その過程で性教育やジェンダー、セクシュアリティについてあらためて知ることがすごく大事だと考えました。
長田:日本で性教育というと「セックスの話をする」みたいな感覚があるけれど、世界的にはもっと広く身体の人権について教える教育、いわゆる「包括的性教育」がスタンダードなんです。世界標準には追いつきたいけど、「全部ぶっちゃけようよ!」ってなんでも一律オープンを押し付けられることには抵抗があって……。リサーチを重ねるうちに、デリカシーや繊細な部分を残しながら、ずば抜けたセンスで包括的性教育を教えているアクロストンさんに行き着いたんです。
みさと:ありがとうございます。
長田:例えば、北欧の性教育の教材を見ていると、男女だけじゃなく、女同士、男同士のカップルも同じ地平で紹介されているし、裸のイラストも痩せていたり太っていたり、いろんな体型の人が載っているんです。ベースのところで多様性教育が始まっているのが羨ましくて。アクロストンさんの性教育の伝え方にも、そういう広い感覚がある。ご著書の『3~9歳ではじめるアクロストン式「赤ちゃんってどうやってできるの?」いま、子どもに伝えたい性のQ&A』(主婦の友社)を読んで感動したのは、体内受精だけではなく、体外受精や人工授精で産まれる子どもについて触れていたことで、生まれ方の多様性についても触れられていたこと。どの生まれ方も等しく扱われているから、すごく健やかだし、時代に即しているなと思って。
みさと:さっき長田さんが言っていたように、性教育ってセックスや生理についてだけの話だと思われている部分があるんだけど、そうじゃなくて。まず自分の身体をきちんと知るのがすごく大事で、そのうえで性は命を生み出すことにも関わる大切なことだと学ぶことが、自分やほかの人の人生を豊かにすることに繋がるんです。そうした考え方が日本ではなかなか広まらないので、活動できたらと思っていて。
ルッキズムと、視覚から得られるものを大切にすること。そのふたつをごっちゃにして語らない
長田:ぱんちゃんは、最近はじめた「ユニコーンはここにいる」というメディアの記事がめちゃくちゃいいんですよ! 毎週金曜20時半の更新が楽しみ。
杉田:嬉しいです。私はLOVE PIECE CLUBというところで、セクシャルヘルスやセクシャルウェルネスにまつわる仕事をしていて。月経カップやバイブレーターなどを販売しているんですけど、それと並行して、友達4人で「ユニコーンはここにいる」というウェブメディアをnoteで始めたんです。「フェミニズム」と「クィア」という2本の柱を立てて、4人それぞれが連載をしています。私はラブピ(LOVE PIECE CLUB)に入るまでファッションの仕事をしていたんですけど、身体やジェンダーと衣服の関係について喋りたいことがたくさんあって、装いにまつわる連載を始めました。
長田:文章がみずみずしいし、自分の感覚や視点も広げてもらえる。ぱんちゃんはおしゃれだから、ビジュアル面でもすんなり入ってくる。
杉田:目で見て「楽しそう!」って感じたものを追いかけていったときに、そこに良いものがあったという経験をたくさんしてきた。でも、それは他人からの評価が「おしゃれ」とか「ダサい」とかにかかわらず、自分の選びたいものを自由に選んでいるから「楽しそう」なんだと思っていて。
いま一緒に「ユニここ」(「ユニコーンはここにいる」)をやっている友達から「フェミニストは長い間ダサくてヒステリックというイメージを背負わされてきた。近年は“おしゃれな”フェミニズムが広がりつつあり、より多くの人がフェミニズムに関心を持つようになった。それ自体はよいことかもしれないけど、フェミニズムが既存の価値観に対する挑戦という面を持つ以上、ときにダサさを伴うことを恐れてはならない」と言われて。そういう視点もあるんだと発見がありました。
長田:目から入る情報という意味で言うと、最近はルッキズム(見た目差別)について意識が高まっていて、そのテーマで話をする機会も増えていて。私は見た目で差別するのは良くないことだけど、目で見て楽しい心地よいと感じること自体を悪とすることには抵抗があって。ルッキズムと視覚から得られる喜びを大切にすることとが、ごっちゃに語られてしまうのは怖いなって思う。フラットに考察できる専門家に、定義を含めて取材した方がいい件だね。
杉田:私は人の顔を覚えるのが苦手でしょんぼりすることもたくさんあったんですけど、いまは逆に自分の長所だと思うようにしているんです。見た目の話をするとき、鼻の高さや目の大きさみたいにその人がもともと持っているパーツではなくて、どんなものを選んで身につけているかに着目します。それがおしゃれかどうかは関係なくて、その人にとって心地好さそうであるかが、大切だと思いながら見ています。
みさと:持って生まれた容姿について何かを言うことはだめですよね。私の子どもは小学校5年生と3年生なんだけど、日本の教育って正解を押し付けるようなところがあるから、おしゃれにも正解がある感じがする。
長田:いまは自分のことも時代より、そういう傾向が強い気がする。
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