社会的な肩書きから外れて、すっぴんのコミュニケーションを楽しむ。
―たしかにまったく関係のない第三者だから話せることとか聞けることってありますよね。
はましゃか:そうですね。しかも、仕事柄、私のことをすでに知ってくださっている方と話す機会が増えたので、一から自己紹介するっていう感覚が少なくなってきたんですよね。でもそれをサボり始めたら危ないだろうなって。ちゃんと「私はこういう人間です」ってゼロから説明して関係を始めることは、Tinderみたいな出会い方じゃないとできないなと思いました。
龍崎:出会いの入り口に非対称性があるのが嫌なんですよね。たとえば「はましゃかさん! めっちゃ応援してます!」って感じで入ってこられたら素をだせる友人にはなりづらくないですか?
はましゃか:わかります! 仲良くなれることもあるんですけど、無意識にいいかっこしようとしちゃって、そこから「ウェーイ!」とはなれないっていうか(笑)。
龍崎:そうそう。最初の入り口は、あなたの話にも興味があるし、私の話も聞いてほしいという、人と人のフラットな関係性で始められたらすごく気持ちいいと思うんですよ。社会的な肩書きから外れて、すっぴんのコミュニケーションを楽しむみたいなね。
はましゃか:どんな人でも、それぞれ仕事のうえでの肩書きや立場を一回全部ゼロにして自己紹介する良さってあると思います。やっぱり普段は自分を知っている人のなかでの出会いやつながりを考えることが多いけど、Tinderではそれとは違う出会い方ができますよね。ネットとリアルで出会い方をわけるのって、別のブラウザを開いているような感覚です。
Tinderで得られた「安心感」や「セラピーみたいな感覚」。
―どんな人であれ、自分がまとっている立場を一旦脱ぎたいという感覚ってきっとありますよね。おふたりはそういった新しい出会い方をした結果、なにか気持ちの変化はありましたか?
はましゃか:私の場合は、Tinderで会った人と飲み始めてから最終的に5、6人、近所の友達が増えて、「これが地縁か!」って感じているんですけど、地域の人とつながっていると台風や地震、災害があったときにすぐ相談できたりしますよね。フリーランスだし、ひとり暮らしだし、生活ベースで安心感を得られるようになったのは大きいです。
龍崎:安心感で言うと、私の場合はやっぱりまったく知らない人だからこそ楽しく話せるっていうことは大きいなと思います。一緒に仕事をしている人や知人、家族に、わざわざあらためてするまでもない話ですら、私のことをまったく知らない人だと楽しく話せる。相手が話しやすい人であることが前提ではあるけど、毒にも薬にもならない話をしてもいい関係性はメンタルに良い気がしていて。セラピーみたいな感覚ですよ(笑)。
はましゃか:わかります。とくに仕事の立場で話をしていると、なにか実のあることを言わなきゃいけないようなプレッシャーもありますよね。
龍崎:ありますね。言わなきゃいけないプレッシャーと、逆にこちらも相手に気持ちよくお話ししていただかなくては……となったり、勉強させていただこうとなったりすることもある。でも、Tinderで出会った人だとそれがないし、値踏みされないし、そういうのが楽ですね。
はましゃか:天気の話みたいな、オチのない話ができる相手がいると、ストレスの溜まり方が全然違いますよね。たしかにキャリアの坂道を登っていくときに積極的に人に話を聞くことは必要なんですよ。でも、坂道じゃなくて、原っぱみたいな場所でしゃべれる人がいることは精神的にすごくいいですよね。