「ネガティブ出身」の4人が出会って、毎日のようにお互いを褒めるようになった。(ユウキ)
コンプレックスを吹き飛ばすようなポジティブでハッピーなオーラを持ったCHAI。今のようになれたのは、「褒め合い」がきっかけだったそう。
とんだ林:CHAIって、すごいポジティブでハッピーなところがいいなって。嫌なことを吹き飛ばすパワーがあるよね。
ユウキ:ありがとう! CHAIには「ポジティブばか」っていう裏テーマがあって。いつも笑顔だし、しょうもないことで笑ってる。でも、みんなネガティブ出身なんだよね。そんな4人が出会って、毎日のようにお互いを褒めるようになって。「今日肌きれいだね」「服似合ってるね」「ありがとう」ってずっと繰り返していたら、自分でもそう思えるようになってきたの。全員が同じようにコンプレックスを抱えていて、価値観が似ている安心感があったから自然と褒め合えたのかも。
とんだ林:メンバー同士で褒め合えるのっていい環境ですよね。わたしも、OLをやりながらも「本当は何をやりたいんだろう」って考えていた25歳のときに、急にイラストを描くことに目覚めたんだけど、幸運なことに周りに否定的な人がひとりもいなくて。みんな「やりたいことが見つかってよかったね」って感じだったのがよかったな。そのときに否定されてたら、「そっか……」って思って止めちゃったかもしれない。Instagramに作品を初めて載せたときも、こんなに共感してもらえるって思ってなかったから、驚きはありました。「気持ち悪い」とか言われたりすることもあるけど、良いって思ってくれる人がいることには支えられますよね。
とんだ林蘭さんのInstagramより
ユウキ:本当にそう思う!
周りにいる人からポジティブな言葉をかけてもらうことは、コンプレックスを乗り越える一つのきっかけになるのかもしれません。CHAIは、4人の中で自信を持つためのおまじないがいくつかあるのだとか。その一つが、「ライブの前に自分たちは『外タレ』だって思い込む」ということだそう。
ユウキ:ライブに出る直前に、「わたしたちは今日は香港人だ!」って設定しているんです。「ハローエブリワン」みたいな(笑)。そういう気持ちであれば、会場がアウェイでも気にしないし、強くなれる気がして。
とんだ林:わたしも、日常の中で「外国人旅行客」っていう設定で街を歩くことがある。外国に行くと日本にいるときより知らない人に話しかけたりできるから、自信をつけるためにそんな感じで歩いてみるときがあります。
ユウキ:すごい、おんなじ! 日常で考えたことはなかった。使えそう!
美学って人それぞれで良いと思う。わたしにとってはこれが「まとも」って。(とんだ林)
そして、今回ユウキさんがデザインした手鏡も、ポジティブな気持ちになれる大事なライフハックアイテム。
ユウキ:朝起きて、鏡を見て「よし、今日もわたし可愛い」って言うの。CHAIは自然とみんなやってる。傍から見たらすごい光景だと思うんだけど、めっちゃポジティブになれるから、おすすめしたい! この鏡を使って、騙されたと思ってやってみてほしいな。
とんだ林:それ、すごい良いアイディア!
ユウキ:鏡にいれた「I’m not perfect」っていうメッセージは、CHAIの“フラットガール”という曲で出てくるフレーズなんだけど、「足りないくらいがいいんだよ、それが可愛いんだよ。嫌なところも、愛してあげてほしい」って」って伝えたかったの。3人のうち1人はほくろがある女の子を描いたんだけど、知り合いで顔に大きなほくろがあって、それを「チョコチップ」って呼んでる人がいて。それがすんごい可愛いと思ったから描きました。
一方のとんだ林さんの「まともな美学ポーチ」には、ふくよかなビキニ姿の女性が秤の上に乗っているという可愛らしいコラージュが。
とんだ林:人と違うものだったり、個性的なものをモチーフに使うのが好きで。ふくよかで満面の笑顔を浮かべたビキニ姿の女性を見つけたときに、感覚的にいいなって思ったんです。最近は太っている人やマッチョな人の身体って素敵だなって思って、作品にもよく使っています。例えば、昨年末公開された『エンドレス・ポエトリー』が話題になっていた(アレハンドロ・)ホドロフスキー監督の作品って、奇形と言われる人がたくさん出演していて、一般的に言われる美男美女が全然出てこないんですよね。こういう作品に触れると、美しさの意識がリセットされるように感じます。
とんだ林:最近少し気になるのは、イマドキの中高生って盛れるアプリでばかり自撮りをしているから、素のままの自分の顔を受け入れられていないんじゃないかな、って思っていて。例えば、イベントとかで一緒に写真撮ったりするとき、画面を見るとみんなめっちゃ目でかいんですよ。高校生の知り合いも、撮った写真を見て「こことここが嫌だから絶対SNSに載せないで」って言っていたり。でも、こんなにスマホで加工できる時代だと「これが美しい、美しくない」ってみんな同じ価値観になるのも仕方がないですよね。だから、いろいろな美しさがあることを表現するCHAIさんは、救世主みたいな存在だと思う。
ユウキ:えへへ。たしかに。わたしたち真逆のことやってる。
とんだ林:「まともな美学ポーチ」っていう名前をつけたのも、そんなところから来ていて。美学って人それぞれで良いと思う。わたしにとってはこれが「まとも」って。
ユウキ:みんなと違うところがあったときに、自分だけ違っておかしいって思うから、コンプレックスになっちゃう。けど、逆に考えたら世界のどこを探しても自分にしかないってことだから、見せびらかすくらい、自慢して良いんじゃないかなって思ってて。
とんだ林:ね。そういえば、わたしの友達が八重歯を矯正しちゃって、超もったいないって思いました。可愛かったから。
ユウキ:もったいない〜。八重歯なんてなりたくてもなれないし!
とんだ林:でも自分に自信がつくのなら、矯正とか整形も全然いいと思う。結局、自分が自分のことを良いって思えるかどうかですよね。
人間誰しも、何かしらのコンプレックスを持っています。コンプレックスの克服の仕方は、人それぞれ。「可愛い」や「美しい」も、人それぞれ。人と違うことや隠したくなることを、「個性」として「可愛い」に転換している二人の作品は、きっと気づきと勇気を与えてくれるはず。
写真を加工して、切り取った自分をSNSで演出して、ネットで見た他人の意見に同調して、嘘で取り繕って……あれ、本当の自分はどこ? なんてことになる前に、このポーチに自分だけの美学を詰め込んで、鏡で自信をつけてみよう。もしかしたら、そこには愛してあげるべき自分が待っているかもしれません。
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