もし、この場所で生きていくとしたら? そこで生きる人たちの生活に触れることは、旅の醍醐味の一つ。旅を通じて、近い未来、遠い未来にそこで生きることを想像するだけで、生き方の選択肢がぐんと広がる感覚を得ることができます。そんなかけがえのないパワーを持った旅に出ることが難しい今、インターネットの力を使えば、同じような感覚を得ることできるかもしれません。
4月の特集「どこで生きる?」に作品を寄せてくれた辰巳菜穂さんは、Googleストリートビューで世界中を旅してみつけた「何かいい風景」を描くことをライフワークにされています。今回描いたメキシコの風景や、ストリートビューのカメラという「誰のものでもない目」を見て景色を見るおもしろさについて伺いました。
「どこで生きるの?」と聞かれたら、まず「どう生きたいんだろう?」と考えてみるはず
・特集「どこで生きる?」のテーマをどのように解釈しましたか?
「どこで生きるの?」と聞かれたら、まず「どう生きたいんだろう?」と考えてみるはずです。でも「どう生きたいの?」と聞かれたら、漠然とした答えしか返せないように思います。選ぶ土地、住む家、使う家具、という様々な選択を「生き方」という側面から考えることができるという意味でとても良い質問だなと思いました。
そこで人々がどんな暮らしをしているのかと空想するとき、なぜか懐かしいような気持ちになる
・作品を制作したときに感じた思い、考えたこと。
今回の作品は、メキシコのサン・ルイス・ポトシという場所でみつけた風景を描きました。
日本の景色とはまるで異なるカラフルな土地ですが、そこで人々がどんな暮らしをしているのかと空想するとき、なぜか懐かしいような気持ちになります。どんな土地で暮らすどんな人種の人でも、根っこは皆同じなんだと思えるからでしょうか。
ストリートビューのカメラという「誰のものでもない目」を通した情報としての景色を世界中から探せる
・なぜGoogleマップで見つけた風景を描くことをおこなっているのか。
初めは単純に外国の風景が描きたくてそのモチーフを探していただけだったのですが、続けているうちに魅力を深く感じるようになっていって、現代ならではの面白味を感じています。
ストリートビューのカメラという「誰のものでもない目」を通した情報としての景色を世界中から探せるということも魅力の一つで、そこから自分の主観的な視点での作品を制作し世界中の人と共有できるというのが、旅をして目の前の風景を描くだけではない良さがあって面白いなと思っています。
どこで生きるか、どう生きるか、を常に選べる自分でありたい
・「どこで生きるか」という選択肢について思うこと。
ここではないどこかを選ぶ自由を私たちは常に持っているんだ、というのが私の基本的な考え方です。
日々過ごしている環境の中ではつい近視眼的で狭量になりがちだし、その考えが自分の状況をつらくしている場面もあると思うので、そういうときこそ理想的な場所のことを考えてそこへ向かうためのモチベーションを持ちたいと思っています。
どこで生きるか、どう生きるか、を常に選べる自分でありたいと思います。
建築デザインを学んでいたときから自分の家を設計して建てるというのが夢
・いつか(いつ?)、どこで生きていたいと考えているか。
建築デザインを学んでいたときから自分の家を設計して建てるというのが夢でして、どこに建てようかといつも考えていました。まだ答えは出ていないですが、日本のどこかに本拠地をつくって、あとは海外で展示をしながら旅ができたら最高だなと思います。
どこかで彼女なりに頑張って暮らしている妹
・あなたにとって大切なSheは誰ですか?
どこかで彼女なりに頑張って暮らしている妹です。
周りに惑わされず、自分のペースで幸せをつかんでほしいと思っています。