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第十五回:旅にあう〜梨凛花/ritsuko karitaとの往復書簡1〜

いつだって物語の主人公になれるようなそんな気持ち

連載:前田エマ、服にあう
テキスト:前田エマ 編集:野村由芽
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旅というのは、賭けのようなものだ。

旅先で、私は誰と出会うのだろう。
服は人だと、私は思う。
私にはどこに居ても誰といても、私らしく居られる服を着ていてほしい。

旅先で出会う景色の中に馴染めなくたっていいのだけれど、ちゃんと景色に包まれることができるような、そんな服を私に着ていてほしい。

撮影:石田真澄

撮影:石田真澄

荷物を最小限にして、実用性を重視する旅もあるけれど、思い切り着飾ったり、その場所だからこそ着ることができる服を着る旅も楽しいものだ。

梨凛花の服を見ていると、日本の昭和の少女雑誌の中の世界を垣間みているような気がする。それなのに、アジアのどこかの繁華街で西瓜を食べている女の子を思い出したりもするし、北欧の雪深い森の中で馬の世話をする少女を想像したりする。

私たちは、どうして旅に出たくなるのだろう。それは、人は誰しもが心の中で、少しくらいは物語の主人公になりたいと思っているからだと思う。梨凛花の服は、日常のなかのバカンスだ。いつだって物語の主人公になれるような、そんな気持ちを与えてくれる。ここに居るのに、ここに居ない。そんな無国籍で多国籍な梨凛花の服は、旅も日常も、本当はおんなじくらい特別なことなんだって、教えてくれるからかもしれない。

三宅島へ。梨凛花のコートを着て。

苅田梨都子様

こんにちは。
いかがお過ごしですか?
こうやってりっちゃんにお手紙を書くのは、初めてのことですね。

私が梨凛花を知ったのは
梨凛花のブランドロゴを、友人が描いていたからでした。

梨凛花の服をはじめてみたときのことは
よく覚えています。
小さな頃、夏の日に
ひんやりしたおばあちゃんの部屋で
こっそり昼寝をしていたときに
窓の外で涼しそうに揺れている木々の音を聞きながら
畳へりのひし形の柄や
襖の取っ手の模様のことを
ぼーっと見つめていた記憶を思い出しました。

懐かしい、その言葉がしっくりくるのかな。
不思議だね、初めて出会ったのに。

それから、私は
梨凛花の服を
いろいろな旅のお仕事のときに
お借りしましたね。

香港、三宅島、房総半島……。

梨凛花の服は
旅に連れて行きたくなる。

ここじゃないどこかを
いつも想わせてくれる。

梨凛花

梨のように麗しい
凛とした強さ
花のように儚い

このぴったりな名前を捨てて
自分の名前をブランド名にする、この春。

りっちゃんはどんな気持ちで暮らしていますか。
教えてほしいです。

心狭くなる日々が続きますが
今、私たちは自分の心を成長させることができるよう
後悔を少しでも減らせるよう
懸命に、賢明に生きましょう。

2020.4.7
エマ

PROFILE

前田エマ
前田エマ

1992年神奈川県うまれ。2015年春、東京造形大学を卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーに留学経験を持ち、在学中から、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、朗読、ナレーションなど、その分野にとらわれない活動が注目を集める。芸術祭やファッションショーなどでモデルとして、朗読者として参加、また自身の個展を開くなど幅広く活動。現在はエッセイの連載を雑誌にて毎号執筆中。

苅田梨都子
苅田梨都子

1993年生まれ、岐阜県出身。ファッションデザイナー。
母が和裁士で幼少期から手芸が趣味となる。
バンタンデザイン研究所卒業後、梨凛花を6年手掛ける。
現在は自身の名前であるristuko karitaとして新たに活動を始める。

INFORMATION

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