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日常を細工していく(タイダイ染め編)/櫻子

日常を細工していく(タイダイ染め編)/櫻子

“セレンディピティ”に期待してとりかかってみて

2020年7・8月 特集:癒やしながら
テキスト・写真:櫻子 編集:野村由芽
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その場の美しい誤算を……いわゆる“セレンディピティ”に期待して取り掛かって!

不思議なもので、ここ数か月どうにも白い服に食指が動かなくなった。
色彩心理とはよく言ったものだが、自宅に籠る生活を続けていると、すこしでも彩りを求めて、なんだかゴキゲンな服や色を纏って過ごしたくなっているのだ。おかげで今年は手持ちの数少ないアロハシャツが絶賛活躍中。服に宿るパワーを求め、ついつい羽織ってしまう。しかし去年まではわりかし好んで着ていた白い服の出番が、今年はなんだか少なくてもの悲しい。
ある日、自宅の倉庫の整理をしていた時に、学生時代に友人と取り組んだタイダイ染めの染料のあまりが出てきた。当時初めてのチャレンジで、少し多めに用意したものの、結局使いきれずにそのまま保管していたのだ。ざっくり計算すると、6~7年前の染料だが、品質に特段問題はなさそうだ。
そうだ! 特別なシルエットの服は少しハードルが高くて気が引けるけど、せっかくなので久々に手持ちの白いTシャツでも染めてしまおうか。同じ整理をしている最中に見つけた生成りのコットンバッグもついでにいくつか染めてしまおう。

そこで今回は私のタイダイ染めの記録を。手順はざっくりとしているが、問題なく染まるので、あまり神経質にならずにその場の美しい誤算を……いわゆる“セレンディピティ”に期待して取り掛かって頂ければと思う。パーフェクトな仕上がりは、必ずしも計算通りに手順をクリアしていくことが全てではないと思う。楽しみながら挑むことこそハンドメイド冥利に尽きるとも言えるだろう。
ちなみに私の学生時代当時と比べると、現代の染料はかなり手頃にお求め頂けるようだ。
「タイダイ染めキット」で検索すると、2,000円前後のキットで、Tシャツ約30枚分の染料キットが入手できる。

誰でもカンタンに。タイダイ染め。
(所有時間は定着タイムによるので4時間~1日半)

材料
・塩
・染色用の衣類やアイテム(今回は便宜上、服で統一)
※新品の衣類の場合は糊を落とすために事前に一度洗濯しておく。
・染料キット
※赤青黄の三原色があれば大抵の色が再現可能。
※発色が悪かったりダマになりやすい等注意点はあるものの、食用色素や水彩顔料でも代用は可能。
・定着剤
※染料キットには染料内に定着剤が追加されているものも多いのでその場合は不要。

道具
・ラップ
・ゴム手袋
・タコ糸 or 輪ゴム
・ドレッシングボトル
※色数に合わせて100円均一などで用意。染料キットなどでボトルがある場合は不要
・バケツ
・金網などのネット

作り方
1.柄や絞りを出すために服やアイテムを輪ゴムやタコ糸を用いて縛っていく。じゃばらに折ってみたり、服の真ん中をフォークで抑え、パスタを絡めるように回転させていく要領で丸めながら折ってみたり……「TieDye ideas」で画像検索してみると、様々なパターンアイデアと絞りかたをチェックすることができるのでぜひとも参考に。

2.40℃前後のぬるま湯に塩(3.6%~5%)を投入。目分量で構わないがかなり塩辛いくらいがちょうどいい。服を投入。じっくり塩漬けにして30分ほど放置。
※ちなみに1と2は順序が逆でもOK。縛る際に湿っている方が楽であれば先に塩漬けしてから軽く水気を切った後に縛ってください。

3.ゴム手袋を着用し、着色剤をボトルに入れ、ぬるま湯(40℃前後)を足して染色開始!

3-1.完成形は染色時と比べると2、3トーン明るくなるので、この時点では鮮烈すぎるくらいがちょうどいいです。
3-2.表面だけに着色すると染まらず白いままの部分が残るので、お好みで内側までしっかり染色する。
3-3.柄をすこしボカしたい場合、着色後に何度かギュッと絞ると、染色液が中までしっかり染み込んでムラ染めのような風合いが出ます。
3-4.染料がついてもいいようなバケツ、たらい、衣装ケースなどの上に金網を置いて、そこに置いて染めていくと余分な染料が混じらず漏れ出ていきます。

4.染色が終了したら、染料が乾かないようにひとつひとつラップで包み、時間をかけて定着させていきます。
※染色キットによっては1時間でOKなタイプもありますが、基本は少なくとも8時間(一晩)、長くて24時間を目安に放置します。

5.ラップを剥がし、輪ゴムやタコ糸をほどいて、余分な染料を取り除くため、縛った服を全て水洗いしていきます。

6.定着剤を入れたぬるま湯に服を浸けて30~40分ほど放置(定着剤不要のキットの方は飛ばしてください)。

7.洗濯機で洗剤・柔軟剤などを入れて、通常通りに洗濯。しっかり干したら完成。

基本的には綿あるいは麻生地製品であれば染色が可能なため、その点を留意すればどんなアイテムでも染色が可能なはずだ。
着倒して変色したり、少し汚してしまった服なんかもぜひ染色のメンバーに入れて欲しい。
染色を施すことでほとんど汚れが目立たなくなり、3軍になってしまった服がふたたび1軍に返り咲く……なんてこともままあるのだ。家族や友人と共に、染色を楽しむのも良いだろう。

また、逆に黒い服やデニムを染色ならぬ脱色させていく方法もある。ずばり生地のブリーチだ。これは染色と比べるとずっと簡単で、ハイターと水を1:1の割合でブリーチ剤を作り、換気や場所に注意して、そのまま衣類に塗ったり、スプレーしていく。1分ほどで脱色が始まり、お好みの明るさになったらそのまま洗濯へ。ピンとこなかったらまた脱色すればいい。全ての工程に所有時間は1時間とかからないだろう。気軽にちょっぴりワイルドで遊び心のあるスタイルを楽しむことができる。

写真は今回の完成形。先述したブリーチを施した作業服、そしてタイダイ染めしたお気に入りのロングスリーブからアーティストT、寝巻きやコットンバッグなど様々。左下の桃色と紫ベースなカットソーは昨年のShe is特集「美は無限に」で届けられたギフトだ。まさに美は無限に……ではなくとも、いまいちど新しい命を吹き込むような作業はとってもワクワクする。長い間親しんだ服と、形を変えてこれからも長く一緒にいる方法。RPGゲームのごとく、今年はサスティナブルに手持ちの仲間を更にパワーアップさせて、暑い夏を乗り越えてみてはいかがだろうか。

PROFILE

櫻子
櫻子

ekot spectrum works / 檸檬はソワレ ディレクター
1992/05/07 東京都出身
幼少時から東京、深圳、香港での生活を経て、貿易関連の業務に従事しながら、2015年からワックスサシェ・キャンドルの制作をはじめ『檸檬はソワレ』として活動をスタート。2018年3月より、檸檬ソワレを包括し、より裾野を広げた制作・提案を目的とした『ekot spectrum works (エコー・スペクトラム・ワークス)』を立ち上げ展開中。
東京、札幌、大阪など複数の店舗での取り扱いの他、イベント出展も多数。
最近ではMUSIC VIDEOへの作品提供や、手塚治虫生誕90周年アニバーサリーコラボレーション等、活動の幅を広げている。

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