街の中にあるもっとも身近な憩いのスポット、公園。「公衆が憩いまたは遊びを楽しむために公開された場所」を公園と指すことから、「緑に溢れていること」だけは共通しているものの、その大きさや、施設の充実っぷりも様々です。
晴れた日は子どもたちが遊び回ったり、ベンチを見渡すと、一人で読書をしているおじいさんや、放課後にダンスの練習をしている高校生たちもいる。日々のなかで通り過ぎていた公園という場所を注意深く眺めてみると、こんなにも多様な人がそれぞればらばらに時間を過ごしている場所はほかにないのではないか、と思うほど。公園に行くと気持ちが安らぐ理由は、自然に触れることで得られる癒やしの効果はもちろんですが、そこに存在している人、そして鳥や動物たちさえも、何かに縛られることなく、ばらばらのままそれぞれに存在していることを許されているように感じるからかもしれません。
今回は、「お気に入りの公園はありますか?」という質問に答えてくれた8人のShe isのGirlfriendsが、それぞれのお気に入りの公園と、その場所がお気に入りの理由を教えてくれました。
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瑠公圳公園(台湾台北市):アングラクラブ「B1」の隣にある、異質な者達が集まり異質のまま新しいアイデンティティや文化を創ることができるコミュニティ
土曜日の23時、網タイツに10cmのハイヒールを履き、ワインのボトルを掴んで、アングラクラブの「B1」に向かいます。B1はハウスやテクノを中心とした電子音楽のナイトクラブで、ドラァグクイーンショーやクィアパーティーも定期的に開かれており、B1で何度も夜を超えてきました。
B1のダンスホールで思いきり踊って汗をかいたら、コンビニでビールとヨーグルトを買って、B1の隣にある瑠公圳公園で涼みます。台北の夜、日中の喧騒からは想像もできない静寂の中でこっそりと、でも生き生きと活動するのは、私達、そして公園に生茂る木々です。夜は空気に湿り気があって少しだけ冷たく、木が青々とした葉を広げ、全身に水を行き渡らせる音が聞こえてくるようです。夜の散歩をテーマにしたZara homeの香水、cuir velvetを手首に吹きかけた途端、匂いが夜の微風に溶け込んでいきます。公園の地べたに友人達と輪になって座り、乾杯して、近況報告から政治の議論まで何時間でも話します。夜の公園で子どものように遊具で遊ぶこともあります。私達の掠れた低い笑い声は煙草の煙となって空気を漂います。
台北の公園にランダムにある謎の遊具(ハイヒールだったので転んだ) https://t.co/wMugajQLat pic.twitter.com/G2XZGdYGYJ
— 燈里 (@lumo_23) November 17, 2019
瑠公圳公園では私達全員がモデルとなり、同時に全員がその観客でファンです。刺青シール、ラメ、ドラァグな化粧、ペン、手作りのアクセサリー、香水、シャツ、カツラ、ゴミを皆で貸し合って装飾し合います。色鮮やかで派手で煌めく装飾があれば、夜の公園でも薄暗い地下のダンスホールでもお互いを見つけられます。
私達と同じように休憩でB1から上がってきた見知らぬ人々とも、この公園で出会い、会話が始まり、新しい友人となります。私達は互いの国籍や職業や年齢は知らず、偶然同じ時に共に瑠公圳公園にいるという共通項だけが私達を結び付けています。連絡先も知らず、別れの言葉も約束もなく公園を離れ、そしてまた翌週、B1で踊り火照った体で同じ場所に戻ってきて、抱き合って再会を喜びます。気付けば、その繰り返しは週末の夜の瑠公圳公園でしか会えないコミュニティを生み出していました。瑠公圳公園は介在者で共有物であり、無作為な私達を出遭わせ、繋げる場所です。
瑠公圳公園で誰かがポータブルスピーカーからディスコを流し、誰からともなくリズムに乗り始め、そこに踊る人々が自然に加わっていきます。ある夜、公園で友人のショーンが言いました、「あなた達がいてくれるから、私もここに存在して良いんだと思える」。私達は1人1人が代えがきかない存在です。公共空間である公園では、異質な者達が異質なまま集まり、各々の感情や欲望を肯定し、表現し、謳歌する自由があります。異質のまま他者と新しいアイデンティティや文化を創ることができる場所です。瑠公圳公園は差異の享受と賛嘆を可能にする場所です。
いつも通り公園でスピーカーから音楽を流し踊った、皆のダンスが大好き… pic.twitter.com/WZkeiEOQSN
— 燈里 (@lumo_23) January 13, 2019
瑠公圳公園には、衝動的なエネルギーを求める人、寝る前の物語を待つ人、永遠の夜を望む人、夜明けを待つ人、傷を負った人、愛されたいと願う人がごちゃ混ぜに存在します。B1と瑠公圳公園を何往復したか分からなくなった頃、再びB1から地上に出ると、風に巻き上げられた髪の隙間に朝日が射し込みます。日曜日の朝です。ベルベットのように夜を厚く覆っていた暗闇は、いつの間にか朝焼けに溶け込んだようです。おはよう。お休みなさい。運が良ければまた瑠公圳公園で会いましょう。
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