前編では、ファッションブランド<yushokobayashi>の、今までのコレクションを振り返りながら、描くように服を作り続けるデザイナー、小林裕翔くんのことを書きました。後編では、彼のアトリエへ遊びに行った日のこと、一緒に服を作った時間のことを写真と共に残します。
裕翔くんのアトリエへ遊びに行ったのは、去年の秋のことだった。その日、私は家にあった古着と、とても大切なTシャツを持って、パンをいくつか買って、裕翔くんのアトリエへ初めてお邪魔した。
裕翔くんのアトリエには、古着と、雑誌と、本が程よい整頓具合で配置されていた。壁には、絵や写真などが所狭しとたくさん貼られていた。私たちは、一緒にパンを食べた。途中で写真家の小林真梨子がやって来て、3人で一緒に散歩をして、写真を撮って、真梨子とはそこで別れた。アトリエに戻ってから、私と裕翔くんは服を作った。その後、ビールを飲んで、アイドルの動画を観て盛り上がって、私は一冊、本を借りて帰った。
裕翔くんのアトリエの壁。映画『はちどり』のフライヤー、パウル・クレーの指人形の写真など、過去のコレクションのイメージソースなども。
裕翔くんが描いたドローイング。アトリエの窓から見える風景など、身近なものがモチーフになっていることが多い。
毎シーズン、一冊の黒いノートにアイデアを書き溜める。日記のようだな、と思った。右は2020年春夏コレクションのノートと、マティスやボナールのポストカード。
私が自宅から持っていった古着。左下のTシャツには、思い出がある。
パリに遊びに行った時、フランス人の友人が帰り際にプレゼントしてくれた。Tシャツには彼女の手書きで「Un Vin Chaud, s'il vous plaît.」と書いてある。意味は「ホットワインください」だ。私はパリでずっとホットワインを飲んでいた。
私の持ってきた古着と、裕翔くんの集めている古着やリボンを縫い合わせて、ワンピースを作った。私が布を切り、裕翔くんが縫い合わせ、それをトルソーに着せて。その繰り返し。