自分を大切にする気持ちを、社会に折られないために。
長田杏奈さんが政治を語る理由

記事のテーマが美容でも政治や社会問題でも、根本の思いは一緒

連載:わたしたちのコトバで、政治を語る。
インタビュー・テキスト: NO YOUTH NO JAPAN(能條桃子、三村紗葵、鮎沢日菜子)  編集:竹中万季
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DVは「#8008」を、性暴力は「#8891」に電話をかけると、それぞれ相談機関につながりますが、意外に知られてなくて焦りました。

もも:長田さんは女性と政治に関することを色々と発信されていると思いますが、最近特に気になるトピックはありますか?

長田:ずっと気にしているのは性暴力にまつわるトピックです。性暴力根絶を目指すフラワーデモに参加したのをきっかけに、性暴力被害を打ち明けられる機会が増えました。これまで信じてもらえなかったり落ち度を責められて傷ついている人がとても多いうえに、加害者がきちんと裁かれて安心できたという話はひとつ聞いたことがない。ことごとく泣き寝入りの話なんです……。性犯罪にも、他の犯罪と同じくしかるべき処罰と被害者支援がある前提で暮らしていたけど、実情は全然ちがった。

現在は全国に広がるフラワーデモの前進となるデモに参加したことが、問題意識を深めるきっかけに。

長田:泣き寝入りする人を減らすには、体について正しく知って尊重する性教育の充実はもちろん、現在大詰めを迎えている性被害の実態に合った刑法への改正がとても大切だと思っています。今すぐに個人レベルでできることとしては、被害を受けてしまったときにどこにSOSを求めたらいいのかを伝えるのも大事だなと思って……SOSを求める際に利用できる短縮番号というものがあるのですが、知っていますか?

もも:ごめんなさい、知らないです……。性暴力を受けたときにかけられる短縮番号って何番なのでしょうか?

長田:去年の10月から、性暴力やDVにあったときに、すぐ相談窓口につながれる短縮番号の運用がスタートしたんです。性暴力は「#8891(はやくワンストップ)」DVは「#8008(はれれば)」に電話をかけると、それぞれ「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」と「DV相談ナビダイヤル」につながります。画期的な取り組みだと思ったのですが、意外に誰も知らないままになっていることに焦りを感じて。必要としている人に知らせなければと思って、イラストが得意な友人と短縮番号をデザインしたステッカーを自主制作しました。

最初はひと目でわかりやすいデザインも考えたのですが、被害にあっている人が加害者に見とがめられる可能性も考慮して、知っている人はわかる象形文字的な案に行き着きました。

もも:素敵ですね。これは「貼りたい」って思いました、かわいいです。

長田杏奈さんとイラストとデザインが得意な友人のmaccaさんが作ったDV相談ナビダイヤル「#8008(はれれば)」の非公式ステッカー。

長田:このステッカー作りをきっかけに、被害者支援の現場には公的予算がとても少なく、最前線でSOSを受ける方々の待遇が不十分なことを知り、気になっています。性暴力やDVの被害者を支援する相談員は、被害者支援の専門知識を持ちキャリアも十分ありながら、非正規公務員として不安定な労働環境で、「官製ワーキングプア」と呼ばれる働き方を強いられていることが問題になっています。

詳しくは、岩波ブックレットから『官製ワーキングプアの女性たち――あなたを支える人たちのリアル』という本が出版されているので、読んでみてください。3月20日に『官製ワーキングプアの女性たち、コロナ後のリアル』というオンラインイベントが行われる予定で、私も視聴するつもりです。困っている人を助ける人がやりがい搾取され、困難な状況に置かれているのを放置すると、社会のセーフティーネットが機能不全に陥ってしまう。ぜひ皆さんに関心を持ってほしいテーマです。

自分より強そうな人やシステムが野蛮なことをしてたら、なるべく石を投げるみたいな気持ちでいる。

もも:ここまで、長田さんの発信の裏にある問題意識・想いを聞かせていただきましたが、長田さんにとってそもそも「政治を語ること」ってどういうことだと思いますか?

長田:個人の努力ではどうにもできない不条理へ石を投げることかな。

もも:わかりやすいですね。今までのお話に全部繋がるな、って思いました。

長田:2019年に出した著書『美容は自尊心の筋トレ』では、「自分で自分を盛り上げろ」みたいな感じで書いちゃったけど、どんなに自尊心を育む努力をしても、大きな力や構造にペシャンって潰される瞬間ってすごくあって。個人がどんなに私って最高だなって盛り上げていても、「お前なんか取るに足らない」みたいに外部からぎゅーってされたらペシャンってなるじゃないですか。女性の自尊心を応援するのと両輪で、自尊心を折ってくる性差別や性犯罪を無くすためにできることはやる。自分より強そうな人やシステムが野蛮なことをしてたら、なるべく石を投げるみたいな気持ちでいます。

『美容は自尊心の筋トレ』(2019年、Pヴァイン)(Amazonで見る

もも:私生活の中で政治の話ってされますか?

長田:家では、ニュースで政治家が変なことを言ってたりすると、私は結構やじを飛ばすんですよ。そうすると家族は「そんなこと言わないの」って止めてくるんです。私は母親を説得することはできないけど、「私はこう思う、そういう気持ちがある」っていうのは隠さないし、一緒の気持ちじゃなくても気にしない。

SNSに関してだと、以前は「何月何日に発売するこの化粧品可愛い!」という投稿が多かったので、新製品情報をきっかけにフォローしてくれていた人は、「あれ? 化粧品の話しないな」ってびっくりしている人もいるかもしれないんですけど。化粧品を紹介するときは、「こんなに素晴らしい、すごくいい色の、素晴らしい質感の化粧品が出るからみんなに教えたい」みたいなモチベーションがあるんですよ。それと一緒で、政治に関する事柄も「こんなに大変な、みんなにも関わる問題が放置されているぞ、みんな~!」みたいな、お知らせしたいっていう気持ちがすごくある。化粧品でも政治でも、私が「おーい!」ってシェアしたいことって、女性の自尊心に関わる話が多いのかなって思います。それに対してはガチでコミットしているので!

もも:そのマインド素敵ですね。だから、政治も美容も同じくらい私たちの心に届いているのか~と思います。ちなみに、美容を入り口に政治について考えたりすることはありますか?

長田:例えば最近だと、環境保護のためにサステナブルなコスメを買いたいけど、値段と機能性で迷ってサステナブルじゃない方を選んでしまうことに罪悪感を感じてる人が多いんですよね。そういうときに、企業のお客様問い合わせセンターにメールを送れたらすごくいいけれど、そこまでいかなくてもSNSやクチコミで「容器が詰替だったらもっといいかな」って一言添えて投稿してもいい。今選びたいものがないなら、「選びたくなるものを作ってよ」って伝えるのも消費者ができる社会運動だと思いますし、そういうやり方もあるよって提案していきたい。自分に要望や困ってることがあったとき、与えられた中から選ぶだけではなくて、「選択肢をくれ」って言葉にしてみるのが大事っていうのは、女性の自尊心を守ることができる社会構造を要求する中でなんとなく覚えたポイントです。

もも:めっちゃ素敵です、ほんとその通りだなって思って聞いてました。消費者としてだけではなく、政治についても、「選びたいものがないから作ってよ」ってみんなが当たり前に言うようになったらもっと前進しますもんね。自分の要望や意見を自分のやり方で言葉にして、「政治を語る」ことが大事なんだなとあらためて思いました。

NO YOUTH NO JAPAN 代表・もものインタビュー後記
「わたしたちのコトバで、政治を語る。」

以前から著作を拝見し、ずっとお話したい方だったので、純粋にお話できたことがまず嬉しかったです。

お話のなかで、長田さんの仕事の根幹は、女性が自分を大事にする気持ちを育てて、それが途中で折られないようにすることにあるとおっしゃっていたことが印象的です。

私も常々、個人の努力ではどうしようもない構造の問題がこの世の中にはたくさんあって、それを解決することが大事だから政治・社会に目を向けることが必要だと思ってきました。まさにそれを実践されている長田さんの言葉にとても勇気づけられました。

PROFILE

NO YOUTH NO JAPAN
NO YOUTH NO JAPAN

「参加型デモクラシーをカルチャーに」をビジョンに掲げ、U30世代が政治や社会について知ってスタンスを持って行動するための入り口づくりを行う。U30のための政治や社会の教科書メディアをInstagramなどで運営するほか、イベントや記事の執筆を行っている。

長田杏奈
長田杏奈

ライター。美容をメインに、インタビューや海外セレブなどの記事を手がける。趣味は花鳥風月。モットーは「美容は自尊心の筋トレ」。

INFORMATION

イベント情報
『わたしたちのヘルシー ~心とからだの話をはじめよう~』

3月6日(土)・7日(日)
さまざまな角度から、女性自身の心とからだのヘルスケアについて見て、知って、ときには楽しみながら考えられるオンラインイベントを2日間開催。長田杏奈さんには『長田杏奈さんと考える、性的同意や避妊のこと』にご出演していただきます(She isのInstagram LIVEにて開催)。タイムテーブルなど詳しくはWebサイトをご覧ください。
Webサイトはこちら

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