NO YOUTH NO JAPANの連載「わたしたちのコトバで、政治を語る。」では、政治に対して自ら声をあげ始めた女性をゲストにお招きし、政治を語るコトバについてお話をうかがったり、女性と政治にまつわるテーマで「政治を語る」ことについて考えたりしています。ゲストをお迎えする回では、NO YOUTH NO JAPAN代表の能條桃子がゲストの方と等身大の目線で政治について語ることで、日々の生活のモヤモヤを政治と繋げるきっかけをつくっていけたらと思います。
5回目の今回は、美容ライターとしてビューティーにまつわる記事の執筆をされている傍ら、SNSなどで積極的に政治や社会に関しても発信するライターの長田杏奈さんをゲストにお招きし、美容ライターが政治や社会問題について声を上げることの意味についてお話を伺います。長田さんが政治を語る原動力とは? NO YOUTH NO JAPAN代表の能條桃子(以下もも)とのクロストークをお届けします。
仕事の根本として「女性の自分を大切にする気持ちが健やかに育ち、途中で折られないこと」を、一貫して大切にしています。
もも:いつも応援ありがとうございます。NO YOUTH NO JAPANのInstagramも見ていただいているようで嬉しいです。
長田:はい。いつも拝見しています。日々の暮らしに疲れてしまって、「政治のことはもう考えたくない!」という日もあるのですが、そういうときでも、NO YOUTH NO JAPANのInstagramは見られます。
もも:そう言ってもらえるのはありがたいです。私も、いつも長田さんが発信されていることと、NO YOUTH NO JAPANの活動に交わる部分があると思って拝見していたので、今回インタビューをお願いしました。普段長田さんはライターのお仕事をされているそうですが、具体的にはどんなお仕事をされているんですか?
長田:主に美容ライターとしてビューティーにまつわる記事を書いています。ですが、常々から気になることについて言葉にしていると、そのテーマについて執筆の話が来たりして、最近では美容とまったく関係ない記事を書くことも多くなってきています。
もも:美容ではない記事というのは、どんな内容の記事ですか?
長田:自分の関心領域に沿った内容がほとんどです。例えば、私はお花が好きで大量に育てていて、Instagramもほぼ花スタグラムなんですね。そうすると、お花の会社から栽培マニュアルについての記事の依頼の話が来たりします。他にも、She isで「政治一年生のための○○」にも携わっているのですが、これは持ち込み企画です!
美容にお花に政治にって、一見バラバラに思えるかもしれませんが、自分の中では一貫性があるんです。長年美容ライターを続けるうちに、女の子たちのうれしい瞬間や自尊心が高まる瞬間を応援するというのがライフワークになっていって。でも、本人たちがどんなにコツコツ自分を大切にする気持ちを育んでも、一歩外に出たときに、その尊厳が社会の構造によってぽきんと折られてしまう局面が山ほどある。それを見ないふりして放置するのは、誠実じゃないと思うんです。
なので、結果的にジャンルをまたぐことはありますが、仕事のモチベーションとしては、「女性が自分を大切にする気持ちが健全に育つことを応援し、それが途中で折られない社会や文化を目指す」というのは、一貫して大切にしています。
政治や社会問題にまつわる記事と、美容の記事とは180度ちがうように受け取られるかもしれませんが、根本の思いは一緒です。
もも:長田さんにとって、記事を書くということは「女性をエンパワメントしていく」ということなんですね。そもそも長田さんが政治や社会のことに目を向けるようになったきっかけは何だったんでしょうか?
長田:子育てがひと段落してキャリアも安定し、社会に目を向ける余裕が出てきたことが大きいと思います。正直いって、社会人になりたての頃や子供が小さい時期は、目の前のことで精一杯過ぎて、政治に関心を向ける余裕はありませんでした。でも、振り返ってみると、いちばん政治や社会に助けてほしかったのは、目の前の生活で精一杯だったまさにその時だったんですよね。
もも:そうだったんですね。なぜそのように関心を持った政治や社会に関するテーマについて発信するようになったのでしょうか? 政治に関する発言ってまだまだタブー視されることもありますし、勇気がいりますよね。
長田:直接的なきっかけは、2019年にある政党が女性誌とコラボTシャツを作ったキャンペーンに危機感を持ったことかな。能條さんは覚えていますか?
もも:とても衝撃的だったので、覚えています!
長田:女性にとってワクワクする有意義な情報を届けるはずのメディアが、特定の政党と組んで実態とはかけ離れた耳障りの良いメッセージの書かれたTシャツを無造作に読者モデルに着せている様子に、「大人や権力が、おしゃれを楽しんだり自己実現をしたい若い女の子に付け込んでいる。これが当たり前になったら困る!」と、ショックと恐怖を感じました。同時に、自分自身もライターとして、そりゃ素敵なコスメを紹介するだけでいた方が楽だし無難かもしれないけれど、社会や政治のことに触れるのはタブーみたいな雰囲気に加担するのは、読者に対して無責任なのかもしれないと考えるようになりました。
選挙前に慣れ親しんだ女性誌が特定の政党のプロパガンダに使われてしまうことがどうしても許せなかったので、まわりの人に「カウンタープロジェクトをやろう」と誘って回りました。現場には「あれはないよね」と怒っている人もいましたが「政治テーマはちょっと」と及び腰で、紙はもちろんwebでも断られまくって。最終的にShe isだけが「やりましょう」と乗ってくれ、『政治一年生のための』シリーズがスタートしたんです。
もも:そうだったんですね。She isに寄稿されている長田さんの記事はどれも本当に女性をエンパワメントするものだと思って読んでいましたが、そんな背景があったとは驚きです。
この一件がある前から、政治や社会について発信することについて考えたりしていたことはありましたか?
長田:またShe isの話になっちゃうんですけど、「お花見蚤の市」というイベントは転機と言えるかもしれません。このイベントはShe is のMembers向けのイベントで、Girlfriendsそれぞれが店主となり、参加者と関わることのできるイベントでした。私は、来てくれた女の子に生花で作った花かんむりなどのアクセサリーを販売しました。一応美容ライターなので、リップパレットを作って希望者に塗って、チェキを撮ったりして。その時、参加してくれた女の子たちがすごくうれしそうに目を輝かせていて、「私、一生こういうことだけやってきたい!」と、強く思いました。
2019年、『お花見蚤の市』の#花鳥風月labの花飾り店の様子。
だけど、イベント後に友だちと打ち上げをしていた店で、近くの席に延々とセクハラを受けている女の子たちがいて。せっかく女の子にうれしい瞬間や自信を持ってもらう瞬間を作って応援しても、一歩外に出た瞬間にペシャンコにされてしまうようなことが野放しになっているよなぁと虚しさと怒りが込み上げてきて。この時に、友人と性暴力根絶を目指すデモに行く約束をしたんです。これが遅咲きのデモデビュー。
政治や社会問題にまつわる記事と、美容の記事とは180度ちがうように受け取られるかもしれませんが、根本にある思いは一緒です。
政治について発信することも、女性向けメディアに関わる者としての責任だと考えています。
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