5月に熊本へ行った。まるで旅行のような書き方だが、これは帰省だ。
私にとって、高校までの18年間を過ごした場所であり、10年以上離れている場所でもある。年に数回帰省することはあっても、「何か熊本で美味しいお店ある?」と聞かれると答えに困ってしまう。好きだったお好み焼き屋は潰れてしまったし、当時の高校生が通う店といえば近所にやたらと点在しているファミレスだけだ。
私にとっては過去に「日常」だった地元。しかし、この時同行した彼は地元が関東のため、熊本に行くことは「非日常」であり、それは帰省ではなく旅行だった。
素朴な疑問だが、観光地の周辺に住む住民は、観光スポットに足繁く通うのか。「そんなしょっちゅうは行かないよ」という人が多いんじゃないだろうか。大仏の周辺に住む人は、夢の国の近辺に住む人はどうだろうか。いや、夢の国は行くかもな。
何はともあれ、私は彼を連れて帰省したわけだが、彼は彼でどうしても行きたい場所があった。阿蘇の大観峰だ。映画『ユリイカ』のラストシーンのロケ地である。役所広司と宮崎あおいが共演しており、彼の一番好きな映画らしい。途中で流れるジム・オルークの楽曲や、ラストシーンの話を何度も聞かされた。
「大観峰についたら俺がラストシーンの宮崎あおいをやるから、役所広司やって」と言われた。今の聞いたか。私が役所広司だそうだ。いざ到着すると、5月とはいえ山頂だから、とにかく寒い。小雨も降っていて風が冷たかった。大観峰の石碑がある場所まで、るんるんで歩く宮崎あおいと、震える役所広司。
私も大観峰は「小さい頃に行ったかもしれないけど、もしかしたら初めてかもしれない」くらいの記憶しかなくて、実際その地に立ってみると、そんじょそこらの山とは違っていた。昔のWindowsのデスクトップを彷彿とさせる草原の緑色のビビッドさ。
文字にすると陳腐にしか書けなくて難しいけど、これは私にとっても「非日常」かもなーなんて思っていたその時だ。突然彼が叫んだ。「○○(私の名前)! 帰ろう!」それは『ユリイカ』のラストシーンで役所広司が叫ぶセリフだ。あれ、結局君が役所広司をやるのか。
私は「さむいさむい、車に戻ろう」と言ってその場を後にした。もちろん、宮崎あおいにそんなセリフはない。
自分にとっては日常を過ごした場所であっても、地元の滅多に行かない観光地に「そこを非日常とする人」と一緒に行くことによって、帰省が旅行になる。あの景色だけでも、だいぶ非日常だと思っていたが、映画の再現をさせられたのも、なかなか非日常じゃないか。彼は満足げだった。「天気が良い時にリベンジしよう」とも言っていた。次こそ、私が役所広司かしら。
7月の特集テーマ「旅に出る理由」の爪「pop」
いつの日か、喫茶店で飲んだ炭酸。カラフルな寒天ゼリーを爪に閉じ込めた代わりに、解放したい何か。
使った色
A. She is オリジナルネイル「Night trip navy」
(7月のギフト「旅に出る理由」に同梱)
B. ラメ入りのネイル (今回は2月のギフトに同梱されていた「Ultra love」を使用)
C. マットトップコート
D. 赤
E. ビビッドな水色
F. 少し透ける緑
G. 白
C~Fは100均やコスメストア等で購入できる。
D,E,Fは寒天ゼリーに近い、ハッキリとした色を選ぶと可愛い。
塗り方
1. 右の親指・小指と左の中指以外を「Night trip navy」で塗る。
2. 1の上からラメ入りネイルで、間隔広めのドットを描く。
3. 右の小指を白で塗る。
4. 右の親指にマットトップコートを塗り、上から赤や水色、緑で小さい点を描いていく。
5. 中指に赤や水色、緑で大きめの四角をランダムに描いていき、十分に乾燥させた上からマットトップコートを塗る。
4と5の赤や水色、緑は四角を描くように意識して描くとソーダに入った寒天ゼリーのように見える。
4はマットの上に色を、5は色の上からマットを塗るとそれぞれ違った発色をするので楽しい。