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第十回:物欲と金銭状況の均衡。

今月ちょっと厳しいな、という時に物欲が高まるけれど

2018年9月 特集:お金と幸せの話
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
テキスト・撮影:つめをぬるひと 編集:竹中万季
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こんなことを書いたところで、誰かの共感を得られるのかは分からないが、私は、物欲と金銭状況の均衡がとれないことが多い。

今月ちょっと厳しいな、という時は物欲が高まってしまう。街を歩くとなんでも欲しくなるし、ネットを見ているとスクショが増える。前々から買わなきゃと思っていたものを急に思い出したり、今まで挑戦したことのないことをやってみたくなったり、入ったことのない店に入ってみたくなったりする。給料日になったら、このにょきにょきと生えてきた物欲を成敗してやるつもりだった。

しかし金銭的に余裕が出てくると、この物欲がぱったり止まってしまう。感覚としては、ものすごく体調が悪くて病気を治したかったのに、病院へ一歩足を踏み入れた途端によくなった気がして診察を受けなくてもいいかも、と思ってしまうあれと似ている。カメラロールにあったスクショは「今考えたらそこまで欲しくはないな」と削除してしまうし、買わなきゃいけなかったはずのものは「そこまで急ぎか?」と寝かせる。入ったことのない店や挑戦したかったことは「また今度でいいか」と先送り。貯金ができるメリットはあるが、物欲に対して完全に試合放棄というのも考えものだ。

金銭的に厳しい時のほうが意欲的というか、生き生きしているような気がするし、欲しいものは欲しいと思っているうちに手に入れたほうが幸せなのかもしれない。

だけど、おそらく私は自分の金銭状況にかかわらず「入手した途端に興味を失ってしまうであろうもの」に対して冷静にジャッジできない人を見るのがあまり好きではなくて、そういった人を見ると反面教師的に、自分自身の欲をどこかに投げてしまうところがある。できれば、手に入れてからも尚、充足感を日常的に得られるものだけを厳選したいし、そういうものと、そうでないものの判断ができる視点を持っていたい。

別に私に品があるとは思っていないし、物欲への試合放棄がしたいわけではないけれど、「欲に対して学習しないこと」を「自分に素直であること」だと勘違いするのは、あまりにも野暮ではないか。

こんなことをいつも考えているから、また給料日後にはカメラロールのスクショを消すだろうし、いざ買い物に行くと「私はなにが欲しいのか」と哲学かぶれのようなことを言ってしまうのだろう。

9月の特集テーマ「お金と幸せの爪」の爪「greed」

「欲に対して学習しないこと」と「自分に素直であること」は紙一重だと思う。

使った色

A. She is オリジナルネイル「Little glory」
9月のギフト「お金と幸せの話」に同梱)
B.
C.
D.細筆の白・黒
E.エメラルドグリーンのような緑(ラメ入りが良い)

B~Dは100均やコスメストア等で購入可能。
EはNAIL HOILC GR705を使用。

塗り方

1. 左の人差し指に黒を、中指に白を、右の小指にエメラルドグリーンを塗る。
2. その他の指をLittle gloryで塗る。
3. 右の親指に細筆の白と黒で斜線を描く。
4. 左の白と黒を塗った爪の一部をLittle gloryで塗る。
5. 4を塗った、白・黒とLittle gloryの境界線付近にエメラルドグリーンで点を描く。

PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

INFORMATION

連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
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第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。
第ニ回:コンプレックスの有効活用。
第三回:ターニングポイントはボーナストラック。
第四回:変わることと隠すことは紙一重。
第五回:「始まっている」と思った時から、それは始まっている。
第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。
第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。
第八回:帰省という日常と、旅行という非日常。
第九回:朝5時、蒸し暑い夏の幕張。
第十回:物欲と金銭状況の均衡。
第十一回:拠点を変えてみるという選択。
第十二回:全力で応えるのは敵意ではなく好意でありたい。
第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。
第十四回:爪作家と名乗る理由。
第十五回:配色という名の遊び。
第十六回:夢のような夜明け。
第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。
第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。
第十九回:服の影に見惚れたこと。
第二十回:体の操縦。
第二十一回:根拠のないおまじない。
第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。
第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。
第二十四回:ダミ声の猫。

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