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第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。

iPhoneのやりたいことメモから逸した先にあるもの

2019年7・8月 特集:やすみやすみ、やろう
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
テキスト・撮影:つめをぬるひと 編集:竹中万季
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仕事をしている時や、何か作業をしている時、「休みの日はこれをしよう」「あの店のあれを食べに行こう」という案が、次から次へと頭をよぎる。

そして私はそれらを、とにかくiPhoneのメモ帳にリストアップする。欲しいものや行きたい店を箇条書きにして、達成できたら消す。

最初は、その項目をすこしでも増やすことが先決だという気合いで書き連ねていく。「あそこは混んでるからな」とか「一回見てみても良いかなあぐらいの気持ちだし、そこまで興味があるわけではない」という理由で最初から除外するのではなく、とりあえず思いつくままに書いてみる。

また、これはありがちなことかもしれないけど、自分の好きなものを人から批判されたり、苦手な人がそれを好むようになったりすることで、本来好きだったはずのものを嫌いになってしまうことほど悲しいことはない。

自分の好きなものは人に邪魔されて良いものでは決してないので、「前は好きだったけど、なんだか……」と選択肢から除外するくらいなら、とりあえず何も考えずに書き記しておく。この後、場所やスケジュールなどの理由で物理的に無理なものを除外するという添削作業が初めて行われる。

そして、いざ休みの日。大抵はそのリストで優先順位の高いものから倒していくわけだが、ごくたまに、せっかく作成したこのリストを見向きもしない時がある。

数年前のある休日。行こうと思っていた場所があったが、支度の最中にふと「海を見たい」という思いが脳内にいきなり登場した。ちなみに私は海にあまり行かない。水着も着ないし、海での遊び方を知らない友人達と一緒にうっかり熱海の砂浜に行こうものなら中に入りもせず、ただぽてぽてと砂浜を歩いて終了という有様だった。

その休日も、海に入りたかったわけではなく、ただ海を見てぼーっとしたくて、埼京線からみなとみらい線直通でお台場へ向かった。「やりたいことメモ」から逸したことへの背徳感がより一層海への勢いを加速させた。何ならそのメモを攻略することよりも楽しかったんじゃないか、という気さえしている。

お台場に到着した後、人がたくさんいる砂浜ではなく、反対側の港へ向かった。大きい貨物線が並んでおり、遠くには工業地帯が見える。あまり人もいないその場所に数十分居座り、気が済んだところでまっすぐ家に帰った。

こういう「自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日」というのが私は好きだ。たまにやるから楽しいのかもしれないが、滅多にしないことや、入ったことのない店に一人で入ってみるということだけでもその休日はとても新鮮で、自分自身の経験値が上がったような気持ちになって楽しい。

7・8月の特集テーマ「やすみやすみ、やろう」の爪「Unbalance」

自分にとっての落ち着きや好きなものからたまには逸して、不安定を探検してみる。
好きなものの価値を再認識することもあれば、逸した先に何かを知ることもまあまあある。

使った色

A. She is オリジナルネイル「Dreamy pool」
7月のギフト「やすみやすみ、やろう」に同梱)
B.
C. ベージュ
D. クリアグリーン
E. パープル
F.
G. ラメ

塗り方

1. 全ての爪に「Dreamy pool」を塗る
2. 左中指の中央・薬指の左側・人差し指の右側に
 B~Gで1cmくらいの曲線を描く。
3. 右手の親指にラメで点を、小指はラメで上部を縁取るように描く。

右手の親指に点を描くと、他の指にも同じ点を描きたくなるところをあえて小指にだけ、尚且つ点ではなく縁取りを描いてみる。
カラフルなモチーフも両手ではなく、あえて片手にのみ描くことで左右同じじゃなくてもいい、アンバランスでも良いんだと、先入観や決まりごとから解放できるような爪にした。

PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

INFORMATION

連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
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第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。
第ニ回:コンプレックスの有効活用。
第三回:ターニングポイントはボーナストラック。
第四回:変わることと隠すことは紙一重。
第五回:「始まっている」と思った時から、それは始まっている。
第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。
第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。
第八回:帰省という日常と、旅行という非日常。
第九回:朝5時、蒸し暑い夏の幕張。
第十回:物欲と金銭状況の均衡。
第十一回:拠点を変えてみるという選択。
第十二回:全力で応えるのは敵意ではなく好意でありたい。
第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。
第十四回:爪作家と名乗る理由。
第十五回:配色という名の遊び。
第十六回:夢のような夜明け。
第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。
第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。
第十九回:服の影に見惚れたこと。
第二十回:体の操縦。
第二十一回:根拠のないおまじない。
第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。
第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。
第二十四回:ダミ声の猫。

第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。

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