She isの更新は停止しました。新たにリニューアルしたメディア「CINRA」をよろしくお願いいたします。 ※この画面を閉じることで、過去コンテンツは引き続きご覧いただけます。

第十五回: 配色という名の遊び。

80本のネイルポリッシュが偶然美しい配色に並ぶ時

2019年2月 特集:美は無限に
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
テキスト・撮影:つめをぬるひと 編集:竹中万季
  • SHARE

つけ爪について「なにか絵の勉強とかされてたんですか?」と聞かれることがある。

美術館に行くことは好きだけど、美大卒ではないし、デザインの勉強をしてきたわけでもない。模写がとにかく苦手で、丸や四角くらいしかまともに描けない。ただ、私は自分の作る爪の「配色」が好きで、つけ爪を制作する時もまずは色の配置から考えることが多い。

私の作業スペースにはネイルポリッシュが約80本ほど置いてある。今数えたが、想像以上の数で少し引いてしまう。適当に置かれたその大所帯は時々、偶然にも素晴らしい配色で並んでいることがある。良い配色だと思ったらすぐに写真を撮って、記録に残すようにしている。

思えば私は、何かをiPhoneで撮影する時に「シャッターを押すのに全く躊躇がないよね」と人から言われたことがある。

普通は景色や食べ物を撮る時、カメラを起動してシャッターを押すまでの間に、カメラを近づけたり傾けたりして、ある程度の時間をおいてから撮影をする。

私もそうしているつもりだったが、端から見ると「あ」と思ったらもうシャッターを押してるんだそうだ。「なんかもう笑っちゃうくらい速いよね」と言われた。そんなことあるのか。しかし、良いと思うものや素晴らしいと思う配色を、その瞬間に残しておきたいという気持ちがあるのは確かで、後から見返した時に好きだと思った写真は大抵、配色が素晴らしいものが多い気がする。

なぜこんなにも配色にこだわるんだろうと思い返した時にふと脳裏によぎったのは、よく受験生がぺらぺらめくっている暗記カードのような形をしていて、紙の部分が全部カラーフィルムになった物体。こんな説明で伝わるだろうか。そもそもあれは何なんだ。

気になって、というよりはこういう記事を書くならちゃんと調べないとだめだよな、と思って調べてみたところ、それは「ポリカラー」という名称であることが分かった。

舞台照明に使用するカラーフィルターをまとめたもので、照明機材を扱っているところで販売されているらしい。私の父は地元のホールで照明の仕事をしており、小さい頃は家に「ポリカラー」があった。それをぺらぺらめくって光に当てたり、複数のフィルターを重ねて違う色にしたりするのが楽しかった。その体験が今に繋がっているかは分からないけれど、色に対する好奇心のようなものはおそらくこれが最初だったような気がする。

カラーフィルターを重ねるように、爪の色を重ねる。

今やっていることは、幼少期から続いている色遊びそのものだと考えると、なんだか楽しい。

2月の特集テーマ「美は無限に」の爪「Turn」

いかにも好まれそうな配色から少し外れてみる。合うかどうか分からない色を差し込んでみる。

それは幼い時の色遊びのように奔放で、自由で、的外れでありたい。

使った色

A. She is オリジナルネイル「Infinity」
2月のギフト「美は無限に」に同梱)
B.
C. ベージュ
D. グレー
E. 水色
F. くすんだイエロー
G. クリアなグリーン
F. 細筆の赤

塗り方

1. 右手の親指・人差し指の爪の下半分に白を、中指の爪の下半分にベージュを塗る。
2. 1の3本を乾かしている間に、右手の薬指・小指にベージュを、左手の親指に水色を、残りの4本の爪にグレーを塗る。
3. 全ての爪に「Infinity」を塗る。下半分だけ色を塗った右手の3本の爪は、爪の根元から爪先へ、筆を少し強く抑えるように塗ると、白やベージュが若干滲み、上部に細くかすれたような線を作ることができる。
4. 左親指の水色にくすんだイエローでS字曲線のモチーフを描く。乾いたらクリアなグリーンで右側に少し膨らんだような曲線のモチーフを描く。
5. 1で下半分に色を塗った3本の爪の上部と、4の好きなところ1箇所に、細筆の赤で点を描く。

今回のSheisオリジナルネイル「Infinity」は、いつもの「色」と違い、マットネイルであることから自由度が高く、あえて右手と左手で雰囲気の違う爪にしてみた。

白やグレー、ベージュ、赤の差し色、という配色だけでも服に合わせやすくて可愛いが、そこにあえて、合うかどうか分からない水色、黄色、緑を入れてみることで、ちょっと違和感があって、退屈しない爪になる。

PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

INFORMATION

連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
She isのオリジナルネイルを使って生まれた爪のレシピとエッセイを毎月お届け

第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。
第ニ回:コンプレックスの有効活用。
第三回:ターニングポイントはボーナストラック。
第四回:変わることと隠すことは紙一重。
第五回:「始まっている」と思った時から、それは始まっている。
第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。
第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。
第八回:帰省という日常と、旅行という非日常。
第九回:朝5時、蒸し暑い夏の幕張。
第十回:物欲と金銭状況の均衡。
第十一回:拠点を変えてみるという選択。
第十二回:全力で応えるのは敵意ではなく好意でありたい。
第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。
第十四回:爪作家と名乗る理由。
第十五回:配色という名の遊び。
第十六回:夢のような夜明け。
第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。
第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。
第十九回:服の影に見惚れたこと。
第二十回:体の操縦。
第二十一回:根拠のないおまじない。
第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。
第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。
第二十四回:ダミ声の猫。

第十五回: 配色という名の遊び。

SHARE!

第十五回: 配色という名の遊び。

She isの最新情報は
TwitterやFacebookをフォローして
チェック!

RECOMMENDED

LATEST

MORE

LIMITED ARTICLES

She isのMembersだけが読むことができる限定記事。ログイン後にお読みいただけます。

MEMBERSとは?