第二十四回:ダミ声の猫。

愛猫や愛犬の模様を爪に塗って、常に好きな子を愛でる

2020年7・8月 特集:癒やしながら
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
テキスト・撮影:つめをぬるひと 編集:竹中万季
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近所に「どんちゃん」という地域猫がいる。低いダミ声で「うゃぁ~」と鳴く。可愛い鳴き声の猫も好きだけど、なんだか人情が感じられるような声をしている猫も好き。

どんちゃんがよくいるマンションの大家さんが普段は餌をやっており、時々その現場にでくわす。お腹が空くと「にあ゛~」とダミッダミの声で鳴きながら近づき、お腹いっぱいになった途端、無言ですっと遠くへ行ってしまう。なんて猫らしい猫なんだろう。

餌にも好き嫌いがあるらしく、あまり好きじゃない餌をあげると食べないそうで、大家さんは「わがままなんだよな~」と苦笑い。

大家さんから聞いた話だと、どんちゃんはもう20年ほどこの地域にいるらしく、人間でいうとかなりのおばあちゃん。その地域に昔あったガソリンスタンドに、数匹まとめて置き去りにされていたところを発見されたらしい。

なんと「ガソリンスタンド」の「ド」から「どんちゃん」と名付けられたそうだ(本当か?)。思わずその話を聞いて「ガソリンスタンどんちゃんなんですか!」と、おそらく地球上で誰一人として発したことがないであろう文言を口にした。もしかしたら「がそちゃん」「りんちゃん」「すたちゃん」が存在するのかもしれない。いや、いるのか? というかそれ本当か?

晴れている日はだいたいいつも同じ場所で寝ている。寝起きは「ふゃん」と鳴き、しゃあなしといった感じで人間に顔を撫でさせている。夫は毎朝仕事へ行くたびにどんちゃんを見つけると、声をかけて撫でている。というか撫でるのが当たり前になっていて「撫でない選択肢があるの?」とか言う。

その地域に住む人々からも、老若男女問わず、通るたびに「どんちゃん~」と声をかけられている。まさか名前まで周知されているとは思わなかった。特に土日は多くの人が声をかけてくるからなんだか忙しそうで、ちょっとしたアイドルだ。

餌をくれそうな大人には、自ら近づいてきて甘えたり撫でさせてくれたりするけど、子供は苦手らしく、近づくと逃げてしまう。小学生の男の子たちが「猫いる~?」と周辺をさまよっているのを見ると、私は「静かに寝かしてあげて……」と思いながら余計な心配をしてしまう。

思い返せば、私が上京してから住んできたいくつかのマンションやアパートには、必ず入り口付近に猫がいた。どの猫も近づこうとすると逃げてしまうので、地域猫ではなく野良猫だったのかもしれないけれど、どんちゃんほど人懐っこい猫は初めてみた。

今こうしてどんちゃんがいることで、今の生活はだいぶ豊かなものになっている気がする。どんちゃん自身はそんなつもりないのかもしれないけれど、地域の人々へ確実に愛をふりまいている。

これからも長生きしてほしいな。

7・8月の特集テーマ「癒やしながら」の爪「Pawsome」

片手の爪は大好きな地域猫のお腹の模様を描きました。愛猫や愛犬の模様を爪に塗ることで、常に好きな子を愛でているような気分になれます。

使った色

A. 水色
B. ラメの入った水色の同系色
(今回はOSAJI アップリフトネイルカラー Sorekaraを使用)
C.
D. ベージュ
E.
F. マットトップコート
(D,Eは愛猫や愛犬の模様に合わせて色を変えてもいいと思う)

塗り方

1. 右手の親指から薬指までの4本の爪に水色を塗り、乾いたら爪の上部にラメの入った水色の同系色を塗る。まっすぐ塗るよりも若干波を描くようにすると可愛い。

2. 右手の小指の爪に紺を塗る。

3. 左手の5本の爪にベージュを塗り、乾いたら下部に白を塗る。この時点で、ベージュと白の境界線は少し白がかすれたように描くと、次の工程がやりやすい。

4. ベージュと白を塗った上から、マットのトップコートを塗る。色の境界線を下から上へ、白を伸ばすかのように塗ると、猫の毛の質感のようなものが出る気がする。

この記事にある写真の爪は、さきほど登場した地域猫の、お腹の部分が白いという特徴を爪にしましたが、3,4の工程で、色を変えたり、まだら模様や縞模様にしたりして、皆さんの愛猫・愛犬の模様にすると楽しいと思います。

PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

INFORMATION

つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
She isの特集をもとに生まれた爪のレシピとエッセイを毎月お届け

第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。
第ニ回:コンプレックスの有効活用。
第三回:ターニングポイントはボーナストラック。
第四回:変わることと隠すことは紙一重。
第五回:「始まっている」と思った時から、それは始まっている。
第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。
第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。
第八回:帰省という日常と、旅行という非日常。
第九回:朝5時、蒸し暑い夏の幕張。
第十回:物欲と金銭状況の均衡。
第十一回:拠点を変えてみるという選択。
第十二回:全力で応えるのは敵意ではなく好意でありたい。
第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。
第十四回:爪作家と名乗る理由。
第十五回:配色という名の遊び。
第十六回:夢のような夜明け。
第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。
第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。
第十九回:服の影に見惚れたこと。
第二十回:体の操縦。
第二十一回:根拠のないおまじない。
第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。
第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。
第二十四回:ダミ声の猫。

第二十四回:ダミ声の猫。

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