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第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。

自分の苗字を早く変えたいと思っていた

2019年5・6月 特集:ぞくぞく家族
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
テキスト・撮影:つめをぬるひと 編集:竹中万季
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私は先月結婚した。SNSには、長々と文章を書くのに気が引けて、ただ「結婚したよ」とだけ書いてツイートした。
爪と全く関係のないその5文字の発信ですら、必要だったかはわからない。

これは昔から思っていたことだけど、結婚して何が変わるのかもよくわからなかったし、結婚がゴールみたいな考え方もあまり好きではなかった。でも私はお父さんっ子で、尚かつ一人っ子ということもあり、父を安心させたいという気持ちからくる結婚願望は確実にあった。そして、これは詳細を割愛するが、私は自分の苗字を早く変えたいと思っていた。

父と母は苗字が違っており、私は母方の苗字で生活してきたが、いろいろわけあって早くこの籍から抜けたかった。別に普通の、どこにでもいる苗字だったが、ごくたまに生き辛さを感じる苗字でもあった。

先月、とある方と食事をしていた時に、その理由も含めて話をしたら「そうか、苗字が変わることで救われる人もいるってことなんですね」と言われ、なんだかその言葉で荷が下りたような気がして、まさに救われたような気持ちになった。

近年、結婚の在り方やその多様性について意見が飛び交う中で、夫婦別姓を希望する声が多く聞かれるようになった。さまざまな理由で苗字を変えたくない人もいれば、私のように苗字が変わることで救われる人もいる。

どんな意見も、そのひとつひとつが尊重すべきものであるからこそ、どちらが正しいかを決めるのではなく、苗字を変えることができる制度と、変えずにいられる制度が両方当たり前に存在して、自由に選べるようにする、ということで救われる人はいると思う。

銀行口座が新しい名義になっているのを見た父から「にんまりした」とメールがきた。苗字が変わったことで、あるいは変えずに済むことで、人生の新たなスタートをあたたかい気持ちで始められるような人が増えてほしい。

5・6月の特集テーマ「ぞくぞく家族」の爪「chain」

選択肢の連なりで人生と人を快活に結んでいけるように。

使った色

A. She is オリジナルネイル「bouquet」
5月のギフト「ぞくぞく家族」に同梱)
B.
C.
D. ラメ入りネイル

塗り方

1. 右の中指にA~Dのネイルポリッシュの筆の先端をちょんと置いて、色を塗り重ねる。
2. 左の小指に赤を塗る。残りの爪に「bouquet」を塗る。
3. 両方の親指に赤と白で交互に円になるように点を描く。

3で点を書く際は、細い筆を使うのも良いが、AWESOME STOREという雑貨店で販売されている2wayネイルペンが使いやすいのでおすすめ。

PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

INFORMATION

連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
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第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。
第ニ回:コンプレックスの有効活用。
第三回:ターニングポイントはボーナストラック。
第四回:変わることと隠すことは紙一重。
第五回:「始まっている」と思った時から、それは始まっている。
第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。
第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。
第八回:帰省という日常と、旅行という非日常。
第九回:朝5時、蒸し暑い夏の幕張。
第十回:物欲と金銭状況の均衡。
第十一回:拠点を変えてみるという選択。
第十二回:全力で応えるのは敵意ではなく好意でありたい。
第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。
第十四回:爪作家と名乗る理由。
第十五回:配色という名の遊び。
第十六回:夢のような夜明け。
第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。
第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。
第十九回:服の影に見惚れたこと。
第二十回:体の操縦。
第二十一回:根拠のないおまじない。
第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。
第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。
第二十四回:ダミ声の猫。

第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。

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