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第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。

芯を持っている彼から生まれた爪「Core」のレシピ

2017年12月 特集:だれと生きる?
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
テキスト・撮影:つめをぬるひと 編集:竹中万季
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私はつめをぬるひとという名前で、文字通り爪を塗ったりつけ爪を作ったりしている。ネイルの感想を求められて困るという話はよく聞くが、つめをぬるひとの爪は「黙って見てて」というふてぶてしい態度で、「あえて言わないけど、内心こう思ってる」みたいなものが多い。

誰かに見せるためではなく、自分のために塗る爪。そんな爪を見て、毎回感想をLINEしてくるのが彼だ。

いきなり連載初回からこんな話もどうかと思うけど、「私仕事遅いかも」や「俺って痛いよね」など、自らを下げることによって相手に「そんなことないよ」と言わせようとする保身方法がある。

辛い時の「私なんて」に「そんなことないよ」と言ってあげることで救いになるなら良いが、「私なんて」という言葉を相手からの指摘を阻止する盾としてとりあえず使っている人も多い。

あまり頻繁に使うと「そんなことないよ(って言って欲しいんでしょ)」と相手をうんざりさせてしまう。使いすぎて効かなくなった薬とか、年中セールをやってて限定感がない靴屋に似ている(靴屋に恨みはない)。使うなという話ではなく、使いどころ。盾として使う人に対して、私は「そんなことないよ」をあまり言わない。

冒頭に書いた彼は「自分なんて」という言葉を使わない。決して自信過剰なわけではなく、そこに生産性がないのを分かってるんだと思う。それなのに、逆に人から「自分なんて」と言われたら、ちゃんと「そんなことないよ」が言える。そこがすごい。

彼を褒め倒したいとか、惚気たいとかじゃない。誤解を恐れずに言うと、そういう人は私といなくても大丈夫で、だからこそ信用出来る。彼に限ったことではないが、本当に人から信用されている人は、保身の安売りをしない。そんな人がつい「自分なんて」をこぼした時、私もうっかり「そんなことないよ」を言ってしまうんだと思う。

12月の特集テーマ「だれと生きる?」の爪「core」

一緒にいるけど、それぞれが独立しながら同じ環境にいる。多分一人でも全然やっていけるけど一緒にいることを選んでいる。
芯がある者同士じゃないとうまく出来ないことかもしれないけど、お互い何が野暮なことか分かっていれば大抵のことは大丈夫。

使った色

A She is オリジナルネイル「Neutral purple」
She isの12月のギフト「だれと生きる?」に同梱)
B
C
D 銅に近い色をしたラメ
E 細筆の白
(B〜Eはコスメストア等で300円くらいで買える)

塗り方

1. Neutral purpleを爪に塗る。
2. 細筆の白でうろこのような模様を描く。爪の左側から描くと描きやすい。
3. 紺と金で豆のようなものを描く。普通の丸でも可愛いと思う。
4. 豆の好きなところに1つ、ラメで点を描く。
※筆が良いが、なければ爪楊枝でも可。

PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

INFORMATION

連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
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第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。
第ニ回:コンプレックスの有効活用。
第三回:ターニングポイントはボーナストラック。
第四回:変わることと隠すことは紙一重。
第五回:「始まっている」と思った時から、それは始まっている。
第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。
第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。
第八回:帰省という日常と、旅行という非日常。
第九回:朝5時、蒸し暑い夏の幕張。
第十回:物欲と金銭状況の均衡。
第十一回:拠点を変えてみるという選択。
第十二回:全力で応えるのは敵意ではなく好意でありたい。
第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。
第十四回:爪作家と名乗る理由。
第十五回:配色という名の遊び。
第十六回:夢のような夜明け。
第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。
第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。
第十九回:服の影に見惚れたこと。
第二十回:体の操縦。
第二十一回:根拠のないおまじない。
第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。
第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。
第二十四回:ダミ声の猫。

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