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第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。

似ている部分を探すより少しのズレや癖を楽しみたい

2018年6月 特集:おんなともだち
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
テキスト・撮影:つめをぬるひと 編集:竹中万季
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引っ越しの荷物整理をしているといろいろなものが出てくる。
中でも手紙は強敵で、読み漁ってしまうとちっとも整理が進まない。

昔、上京してすぐの頃、地元の友人から食糧や手紙が入った段ボール箱が届いたことがあって、それはまるで故郷からの仕送りを彷彿とさせるものだった。私の母はあまり家事をしない人だったので、高校の時はほぼ自分で洗濯や自炊をしていたのだが、そんな昔の私を知る友人からの手紙には、「栄養のあるもの食べてるかい? まあこっちにいる時もあまり栄養のあるもの食べてなかっただろうけど(笑)」と書いてあり、ああその通りだよと思いつつも、私は心をくすぐられた。

今まで保管してきた手紙にはどれも癖がある。一緒にスイーツ食べ放題へ行くほど仲の良かった、中学の部活顧問の女性教師がいて、その先生からの手紙にはものすごく良いことが書いてあるのに、最後はうんこの絵で締めくくられていた。その食べ放題に同行した友人からの手紙は、何枚ものメモ帳を駆使して、めくるごとに単語が表れる紙芝居方式になっていた(説明しづらい)。

しばらく読み漁っていると、最近もらった手紙よりも、圧倒的に中学や高校でもらった手紙のほうが多いことに気づく。理由は言うまでもなく、大学に進学してから知り合った人達とは、ほとんどがSNSで近況を伝え合うようになったからだろう。SNSが主流になって手紙を書かなくなった、というのはもう分かりきったことかもしれないが、それを私たちは自然なこととして受け入れている。手紙どころかメールも電話も全くしていないのに、SNSで近況だけはなんとなく分かる、という友人もいるんじゃないか。

それらを打破するわけではないが、先日、SNSをやっていない友人と飲みにいってきた。なにか言いたい近況があるわけでもなく、この記事のネタにするために誘ったわけでもなく(やだなそんな人)、引っ越しでほんの少し遠くなる前に、会っておきたいと思って誘った。わはわは笑って、いろいろな話をたくさんした。

その友人だから、というのもだいぶあるとは思うけど、SNSをやっていない人と話をしていると、なんだか心が健康になっていくのがわかる。別にSNSをすることがジャンキーだと物申したいわけではないし、むしろSNS大好きですありがとうございます、という気持ちでいるけれど、面と向かって話をしたときの情報”だけ”で、その場で言葉にできない気持ちを共有するほうが、ざっくり言うと人間らしい行動のような感じがする。

どうして、と聞かれると私自身もよく分からないけど、SNSをやっていない友人と会っている時の気持ちは、過去にもらった癖のある手紙を読んでいる時の気持ちと少し似ている気がした。

6月の特集テーマ「おんなともだち」の爪「bestie」

似ている部分を必死に探すよりも、ほんの少しのズレや癖を知らない間に楽しめる間柄でいたい。

使った色

A. She is オリジナルネイル「Girls' day out yellow」
(6月のギフト「おんなともだち」に同梱)
B. ライトグレー
C. 薄い水色(おすすめはCANMAKE カラフルネイルズ53)
D. 白
E. 紺
F. オレンジ

B~Fは100均一やコスメストアで購入可。
Cの薄い水色は、一度塗りで若干透けるくらい薄いほうがいい。

塗り方

1. 左の小指以外の9本を「Girls' day out yellow」で塗る。
2. 左の親指に白を、右の人差し指に紺を、爪の先端部分に、斜めに塗る。
3. 2で塗った時と逆の色で爪の右側に四角く塗る。
 (左の親指は白の上に紺で、右の人差し指は紺の上に白で描く。)
4. 空けておいた左の小指にライトグレーを塗り、乾燥させた後に薄い水色を塗る。先にライトグレーを塗っておくことで、通常の水色よりもくすんだ水色になる。
5. 白と紺で描いた指、小指にオレンジ色で点を描く。

少し伝わりづらいかもしれないが、この白と紺は四角の頂点が斜線上にぴったり被るのではなく、ほんの少しずらして描いたほうがふと手に視線をやった時に見飽きることがなくて楽しい。

PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

INFORMATION

連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
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第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。
第ニ回:コンプレックスの有効活用。
第三回:ターニングポイントはボーナストラック。
第四回:変わることと隠すことは紙一重。
第五回:「始まっている」と思った時から、それは始まっている。
第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。
第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。
第八回:帰省という日常と、旅行という非日常。
第九回:朝5時、蒸し暑い夏の幕張。
第十回:物欲と金銭状況の均衡。
第十一回:拠点を変えてみるという選択。
第十二回:全力で応えるのは敵意ではなく好意でありたい。
第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。
第十四回:爪作家と名乗る理由。
第十五回:配色という名の遊び。
第十六回:夢のような夜明け。
第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。
第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。
第十九回:服の影に見惚れたこと。
第二十回:体の操縦。
第二十一回:根拠のないおまじない。
第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。
第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。
第二十四回:ダミ声の猫。

第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。

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