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第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。

どこに住んでいても楽しいスポットを探しだせるのが誇り

2020年3・4月 特集:どこで生きる?
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
テキスト・撮影:つめをぬるひと 編集:竹中万季
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私は今まで4つの場所に住んできた。熊本・埼玉・東京・横浜。引越しの要領もだいたい分かるし、どこに住んでいても楽しいスポットを探しだせる。というよりは、なんてことない場所でも楽しいと思えるくらいにいろいろなハードルが低い。誇り。

熊本でも好きな場所や店はたくさんあったし(今はほとんど潰れてしまったけど)、埼玉でも、たまに一人でふらっと行っては心を落ち着けていた店があった(「2018年5月特集:生活をつくる」の時に書いた記事「第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。」参照)。

東京に住んでいた頃は、スーパー銭湯狂いだった時期があった。仕事が終わり、あまりにも早く湯に入りたすぎて、本当に走って家まで帰って、いそいそと支度をして、また走って銭湯に向かったこともあった。走るといっても小走りではなく、全力疾走。人には見せられないくらいの猛ダッシュ。スーパー銭湯に到着し、「待ってろ、湯」と言わんばかりに服を脱ぐ速さは、子供がすっぽんぽんになる動作そのもの。恥じらいなど無用だ。

今回の「どこで生きる?」というテーマであの頃に記事を書いていたら、スーパー銭湯で生きる、と本気で書いていたかもしれない。寝湯で寝てやる、と。どうかしていた。きっと疲れていた。

東京から横浜へ引っ越すとき、一緒に住む人から「長距離の引越しだけど大丈夫?」と聞かれた。その人のほうが比較的近い距離の引越しだったため、私には長距離という言葉を使っていたけれど、熊本からの上京に比べたら、近距離としか思えなかったし、仕事もリモートワークだったので、「どこに行ったって楽しいでしょう。」という根拠のない自信があって、怖いものなしだった。

あまり近所のことを書くのはよろしくないので抽象的な書き方になるけれど、近所を散歩するときに通る広い歩道や、公園に溢れる子供達の声、ベンチに残るおままごとの跡、散歩する犬たち、近所のパン屋の匂い、暖かくなると現れるダミ声の地域猫、数駅隣りにあるスーパー銭湯(!)。こうして書き連ねるだけでも、今住んでいる場所の好きなところはたくさんあって、私は謳歌している。

胸を張れるほど引越しを繰り返しているわけではないけれど、
「今ここで生きている自分」が好きというよりも、「今まで住んだ場所全てにおいてまあまあ楽しめている自分」が好きだ。

3・4月の特集テーマ「どこで生きる?」の爪「Transition」

どこに住んでも、何をしていても、楽しい部分を見つけられるということは、何にも変えがたい強み。

使った色

A. She is オリジナルネイル「Sand light」
(3月のギフト「どこで生きる?」に同梱)
B.
C.
D.
(今回は「RMKネイルポリッシュ EX-30 フォレストリーフ」を使用)
E. ラメの入った黒いネイル
(今回は「資生堂ネイルエナメルPICO 09 銀座ネオン」を使用)

塗り方

1. 右の小指以外の9本の爪に「Sand light」を塗る。
2. 右の親指の先端部分の淵に、緑で細くラインを描く。
3. 左の薬指に緑と白で斜めに細い線を交互に入れる。
先に緑の線を描いてから、白で隙間を埋めるように描くとやりやすい。
文房具店に売っている細い絵筆を使うのがおすすめ。
4. 右の人差し指と、左の親指に白で楕円形のモチーフを描く。
白が乾いたら、黒で同じように楕円形のモチーフを重ねる。
5. 右の小指にラメの入った黒いネイルを塗る。

4の工程は、ネイルポリッシュの筆だとやりづらいかもしれないので、
ここも細い絵筆などを使用するのがおすすめ。

PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

INFORMATION

連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
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第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。
第ニ回:コンプレックスの有効活用。
第三回:ターニングポイントはボーナストラック。
第四回:変わることと隠すことは紙一重。
第五回:「始まっている」と思った時から、それは始まっている。
第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。
第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。
第八回:帰省という日常と、旅行という非日常。
第九回:朝5時、蒸し暑い夏の幕張。
第十回:物欲と金銭状況の均衡。
第十一回:拠点を変えてみるという選択。
第十二回:全力で応えるのは敵意ではなく好意でありたい。
第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。
第十四回:爪作家と名乗る理由。
第十五回:配色という名の遊び。
第十六回:夢のような夜明け。
第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。
第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。
第十九回:服の影に見惚れたこと。
第二十回:体の操縦。
第二十一回:根拠のないおまじない。
第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。
第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。
第二十四回:ダミ声の猫。

第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。

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