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第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。

自分に合った環境を一人でも多くの人が見つけられるように

2020年5・6月 特集:ここで生きる
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
テキスト・撮影:つめをぬるひと 編集:竹中万季
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2018年の10月に「拠点を変えてみるという選択。」という記事を書いた。当時は在宅勤務という形で会社に属していたけれど、今年の春に退職し、今はフリーランスとして自宅でつけ爪の制作をしている。

自宅での制作が苦痛じゃないのは、インドアという性格だけではなく、在宅勤務の期間があったことによって、家で仕事をすることの慣らしができたからではないかと、最近特に思う。あの期間がなかったら、フリーランスになることには踏み切れなかったかもしれない。もちろん、当時お世話になった会社の方々のお力添えがあってのこと。「お世話になりました」と文字にするのは簡単だけど、今回ばかりは真面目に「伝われ、この9文字」と思いながら書いている。

会社で6年半働き、そのうちの2年半が在宅勤務だった。そして勤務時間もちゃんと決められていた。始業時間になればチャットで挨拶をして、終業時間にはチャットで「お疲れ様でした!」と送信して夕飯の支度。フリーランスになった今でも、その時間はできるだけ崩さないようにしている。

仕事に集中するために心がけたことは、服を着替えること。一張羅! とまではいかないけど、少なくともパジャマのまま仕事をしたことはたぶん一度もない。なんとなく決めている基準は「電車に乗っても大丈夫かどうか」だ。コンビニに行けるくらい、にしてしまうと私はジャージでも平気で行けてしまうので、電車に乗って数駅行けるくらいがちょうどいいと思っている。

何十年も家で仕事をされている方からすれば、私の2年半はたいした期間ではないけれど、在宅勤務をする人の習慣は、このご時世になるまであまり知る機会がなかったので、これを機にもっと在宅勤務の人の話をたくさん聞きたい。

最近はコロナの影響で、在宅勤務への思いを漏らす人が増えてきた。気軽に外出できない辛さからの、ちょっとした解放とも思えるような緊急事態宣言の解除によって、久々に会社へ通勤して、やっぱり会社のほうが集中できる、と思った人もいると思う。そしてその一方で、在宅勤務が自分に合った環境であると知った人間にとっては、このまま在宅勤務がいいと思っていても、なかなか会社では言いづらいかもしれない。

「やっぱり会社が働きやすいよね!」という言葉に足並みを揃えないといけないような気がして、自分に合わない環境と分かっていながら、自身の成長のためと割り切って会社で働く人や、在宅勤務だからといってサボっているわけではないのに、怠けていると思われることを恐れ、「実は在宅勤務もそれなりに大変なんですよ」とわざわざ苦労を探して、結果的に「これが自分に合っている」という感覚そのものを手離してしまう人もいると思う。

でも、苦労というものは家にも会社にも、ちょっと探せばそこらへんに落ちているけど、自分に合う場所はそう簡単に見つけられるものではないことを、私たちは忘れたらいけない。

例えば、仕事で使うボールペンを、書きやすいという理由で人と違うペンを使っても、特に非難を受けることがないのと同じように、会社勤務と在宅勤務を選べる(そしてそれを非難されない)ような世界になればどんなに素晴らしいことか。これはあくまでも理想だし、もちろん職種や業務内容によっては難しい場合もあるけど、だからこそせめて、可能な会社からどんどん選択肢を広げていけたらいいのに、と思う。自分に合った環境を一人でも多くの人が見つけられるように。

5・6月の特集テーマ「ここで生きる」の爪「Optimal」

苦労というものはちょっと探せばどんな場所にも落ちているけど、自分に合う場所はそう簡単に見つけられるものではないことを、私たちは忘れたらいけない。

使った色

A.薄い黄色
B.
C.マットトップコート
D.水色
E.ボルドー
F.

塗り方

1. 左手の人差し指から小指までの4本の爪に薄い黄色を塗り、乾燥したらマットトップコートを塗る。
2. 乾いたら中央に小さく点を描く。
3. 左の親指と、右の小指の爪に白を塗り、左の親指の爪に、青で山のようなモチーフを描く。
山の右側は、習字で「大」の字の、最後のはらいを書く時のようにすると、細くかっこよく描くことができる。
習字が苦手な人でも(私は苦手)、山の左側より若干細く右側を描くだけで、だいぶかわいい。
4. 右の親指から薬指までの4本の爪に、水色とボルドーで2色塗った直後、色の境界線の下部を筆(爪楊枝でも可)でぼかす。

4の工程では、塗る順番に注意。
色の境界線が乾燥しないうちに筆でぼかしたいので、4本の爪に水色を塗る→4本の爪にボルドーを塗る、という順番ではなく、一本一本、人差し指に水色とボルドー・筆でぼかす→中指に水色とボルドー・筆でぼかす、という順番で塗るのがおすすめ。
筆でぼかす時のコツは、あまり色が混ざりすぎないようにすること。
筆圧を弱く、すすすっと、マーブル模様になるくらいがいい。

PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

INFORMATION

連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
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第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。
第ニ回:コンプレックスの有効活用。
第三回:ターニングポイントはボーナストラック。
第四回:変わることと隠すことは紙一重。
第五回:「始まっている」と思った時から、それは始まっている。
第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。
第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。
第八回:帰省という日常と、旅行という非日常。
第九回:朝5時、蒸し暑い夏の幕張。
第十回:物欲と金銭状況の均衡。
第十一回:拠点を変えてみるという選択。
第十二回:全力で応えるのは敵意ではなく好意でありたい。
第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。
第十四回:爪作家と名乗る理由。
第十五回:配色という名の遊び。
第十六回:夢のような夜明け。
第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。
第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。
第十九回:服の影に見惚れたこと。
第二十回:体の操縦。
第二十一回:根拠のないおまじない。
第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。
第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。
第二十四回:ダミ声の猫。

第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。

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