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第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。

運動会の記憶を思い出そうとしても浮かぶのは前後の出来事

2018年12月 特集:それぞれのヘルシー
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
テキスト・撮影:つめをぬるひと 編集:竹中万季
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私は小さい頃から運動が苦手だった。走るのが遅いので、運動会ではリレーどころか「◯m走」と名のつく競技に出た記憶がない。

しいて言えば、ムカデ競走や、台風の目(竹の棒を4人で持って走り、コーンの周りを回ったり、並んでいる人の下に竹の棒をくぐらせたりする、とても説明の難しい、分かる人にだけ分かればと書かざるをえない競技)に出た記憶しかなく、あとは当時放送部だった特権として放送席があるテントに座り、誰が米俵を一番長い時間持ち上げることができるかという競技の実況をしたり、持ち歩いていたインスタントカメラで同級生を撮影したりしていた。今思い浮かぶ楽しかった記憶は、運動会当日ではなく全体練習が終わったあとに起こった出来事だ。

全体練習のときに生徒全員でグラウンドの小石を拾う時間があり、ある同級生が拾おうとした石が深くまで埋まっていてなかなか取れずにいた。掘り進めているうちに人が集まり、先生達も何を言うでもなく遠くから眺めていた。そしてそのまましばらく掘り続けた結果、小石は直径20cmくらいの石として発掘された。石を発見したのは理系の人達で、私は全く面識がなかったのだが、インスタントカメラを持ち歩いていた私はたまたまその場に出くわし、思わず衝動的に「うえーいこっちこっち」とカメラを構えた。

一人くらいは「誰」と思ったに違いないが、発掘の達成感はそれに勝るものだったようで、すぐにみんなが一斉にカメラのほうを向き、まるで触ったらご利益のある石かのように抱えられた石と、それに群がる人達を私は写真に収めた。

あれから十年以上経った現在、駄目元で部屋を探してみたところ、その写真は発掘された。

一応ここではモザイク加工を施しているが、その下には競技とは全く関係のない達成感に満ち溢れた笑顔が並んでいて、モザイクするにはもったいないくらいの写真だ。そもそも共学のはずなのに、写っている人達には女の子が一人も写っていない。一人くらいいてやれよと思った。大人になってShe isという媒体に記事を載せるのだったら、もっと石好きの女の子を呼んでおくべきだったかもしれない。

運動会というスポーツのイベントも結局のところこんなふうに少し逸れた記憶としておさめてしまうので、未だに私は全速力で走ってるつもりでも「歩いてるの?」と言われるし、体は固いし泳げない。おまけに自宅で仕事をしているので、本当にこのままでは体が衰える一方なのでは、と危惧している。危惧だけしている。

12月の特集テーマ「それぞれのヘルシー」の爪「fossil」

運動の記憶を思い出そうとしても、運動をしていない時の記憶が発掘されたことへの飄々とした自戒。

使った色

A. She is オリジナルネイル「New healthy」
12月のギフト「それぞれのヘルシー」に同梱)
B. ベージュ
(今回は5月のギフトの同梱されていた「Hidamari」を使用)
C. ラメの入った水色
D. 細筆の白
E. 細筆の赤

最近、「AWESOME STORE」という雑貨チェーン店でネイルペンというものを見つけた。現在は黒と赤の2色しか販売されていないようだが、筆よりも使いやすく、税抜150円という低価格なのでオススメ。

塗り方

1. 右手全ての指と、左手の親指・人差し指に「New healthy」を塗る。
2. 左中指にベージュを塗る。左薬指・小指にはラメの水色を塗る。
3. ラメの水色を塗った2本の指に、細筆の白で短い線を描く。
4. 右薬指・左親指に、細筆の白で2本の波線を描く。
5. 右と左、両方の親指に、細筆の赤で何ともいいがたい物体を描く。

赤で書いた物体は特に決まりはなく、好きなように描いて良いと思う。

PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

INFORMATION

連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
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第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。
第ニ回:コンプレックスの有効活用。
第三回:ターニングポイントはボーナストラック。
第四回:変わることと隠すことは紙一重。
第五回:「始まっている」と思った時から、それは始まっている。
第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。
第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。
第八回:帰省という日常と、旅行という非日常。
第九回:朝5時、蒸し暑い夏の幕張。
第十回:物欲と金銭状況の均衡。
第十一回:拠点を変えてみるという選択。
第十二回:全力で応えるのは敵意ではなく好意でありたい。
第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。
第十四回:爪作家と名乗る理由。
第十五回:配色という名の遊び。
第十六回:夢のような夜明け。
第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。
第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。
第十九回:服の影に見惚れたこと。
第二十回:体の操縦。
第二十一回:根拠のないおまじない。
第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。
第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。
第二十四回:ダミ声の猫。

第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。

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第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。

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