第二十七回:続く人とは続くでしょう。

あのカフェのブログで見た「続く人とは続くでしょう!」という言葉

2021年3月 特集:出会う、何度でも
連載:つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
テキスト・撮影:つめをぬるひと 編集:竹中万季
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私は爪のことをSNSに投稿しておきながら、TLに爪の写真が出てくることが少ない。
インスタでフォローしている方は、音楽・服飾・雑貨・料理・動物といったジャンルを投稿していることが多いけど、
ネイルのアカウントをフォローしたくないということではなく、自分の手で作る「好きなもの」と、目にしたい「好きなもの」が違うのかもしれない。

毎年新しく出会う好きなものや人というのは、本当に途絶えることがない。
「今年はこんなに素敵なものを知って好きになったけど、来年はそういうものに出会えるんだろうか」と思っていても、
ちゃんとその時期その時期で、新しく好きだと思えるものや人に出会って、自分を救っている気がする。

2018年5月に書いた連載第6回の「誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。」という記事に、今はもう閉店しているカフェの話を書いた。
そのカフェにはブログがあって、閉店最終日の投稿には「続く人とは続くでしょう!」と書かれてあった。
突き放しているように見えるかもしれないけど、その言葉の清々しさと軽やかさが格好良く見えて、将来こういう大人になりたいと思った(私は30代になった今でも「大人になったら」とか「大きくなったら」という言葉を使ってしまう)。

昔、高校を卒業して地元から上京したての頃、同じく上京した数人で「上京組」として、しばらく月1で集まっていたのだが、
ある時、上京組の一人に「もうそんなに集まらなくてもいいんじゃないか」と言われてしまった。「集まりたい時に集まって、月1とか決めずにさ。」と。

言われたときは寂しさを感じたけど、それぞれの新しい生活もあるし、義務で集まるのは確かに違う、と気づかされた。
それ以降、上京組で集まることはなくなったけど、その人は大学卒業後に外務省で勤務していると聞いた。
高校の頃から成績がずば抜けて良かったけど、その能力に驕ることなく謙虚で、海外留学を何度も経験して、勉強も就活も忙しかったに違いない。
そういう生き様だからこそ、あの提案には納得したし、そんなしょっちゅう集まれないのは当然だった。

爪のことを始めてから8年目にもなると、出会ってきた人々との関係性にはどうしてもバラつきがでてしまう。
昔に知り合って今も交流を続けている人、たまにやりとりをして細く長く続いている人、今は全く連絡を取らなくなってしまった人。
当たり前なことだけどそれが自然で、どれが良い悪いということでもないと思う。
これまでに関わった全員と、密な連絡を8年続けようと思ったら、きっと私はつけ爪をひとつも作らないまま、爪作家とは名ばかりで、
まるで映画『パラサイト』の「この石が僕から離れてくれないんだ」というシーンのように「スマホが右手から離れてくれないんだ」とか言いながら、
頻繁に連絡することによって逆に離れていく人も増えて、それを修復しようとして更にスマホが右手から離れてくれない、という負のループで1年ももたないだろう。

連絡を取らなくなってしまったことに対して「ああ最近やりとりしてないな」と思うこともあるけど、
あのカフェのブログで見た「続く人とは続くでしょう!」という言葉は、そんな気持ちをほんの少し軽くしてくれて、
自分が今やるべきことや、今ある関係性を大切にすることに集中していいんだよ、と言われているような気分になる。

昨年の夏、高校のクラスのLINEグループにこんな通知がきた。
「先日バグダッドを離任し、近々また別の国に赴任する予定です」。
なんだか話のスケールが大きくて圧倒されたけど、この遠すぎるくらいの距離感がかえってちょうどいい。

“続く人とは続くでしょう”という言葉は、今とこれからを大切にするための言葉として、軽やかに持っておきたい。

3月の特集テーマ「出会う、何度でも」の爪「Continue」

いろいろなことと何度でも出会い直して、続く人とは続くでしょう

使った色

A.くすんだ青
B.水色
C.ピンク
(今回はコゼットジョリ MOMO URUWASHIを使用)
D.
E.サーモンピンク
(今回はOSAJI アップリフトネイルカラー 16 Eriを使用)
F.深緑
G.黒or茶色
(今回はOSAJI アップリフトネイルカラー 15 Doukutsuを使用)
H.マットのベージュ
(今回はOSAJI アップリフトネイルカラー 103 Yoinを使用)
I.
J.ゴールド

塗り方

1.右手の親指・人差し指、左手の薬指・小指にくすんだ後を塗る。
2.右手の薬指・小指、左手の親指・人差し指に水色を塗る。
3.右手の中指に白を塗り、乾燥したらサーモンピンクを重ねて塗る。
深緑、黒or茶色、マットのベージュを左から順に太めの線で重ねて描く。
一つ一つの線は乾燥してから重ねて描くとにじまない。
ゆるやかな波線や、細やかな波線など、線にバリエーションがあると楽しい。
4.左手の中指にピンクを塗り、乾燥したら白で、細筆などを使って斜線を描く。
5.両手の人差し指・薬指の先端にゴールドの点を描く。
6.右手の親指には白で、左手の親指には赤で点や線のモチーフを描く。
利き手を描くのが難しかったら、モチーフは描かなくても可愛いと思う。

台紙にはこれまでのShe isオリジナルネイルを使用しました。

PROFILE

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪を制作・販売するほか、TONOFON FESTIVAL 2017などの音楽フェスやイベントで来場者に爪を塗る「爪塗り企画」や、ウェブでのコラム連載、ライブ&ストリーミングスタジオ”DOMMUNE”の配信内容を爪に描く「今日のDOMMUNE爪」など、爪を塗っている人らしからぬことを、あくまでも爪でやるということに重きをおいて活動。2020年12月に書籍「爪を塗る ー無敵になれる気がする時間ー」を刊行。

INFORMATION

つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
つめをぬるひととつくる自分のために塗る爪
She isの特集をもとに生まれた爪のレシピとエッセイを毎月お届け

第一回:彼は「自分なんて」を一切言わない。
第ニ回:コンプレックスの有効活用。
第三回:ターニングポイントはボーナストラック。
第四回:変わることと隠すことは紙一重。
第五回:「始まっている」と思った時から、それは始まっている。
第六回:誰も行けないのに、誰にも言いたくない店の話。
第七回:過去の手紙と、SNSをやっていない友人。
第八回:帰省という日常と、旅行という非日常。
第九回:朝5時、蒸し暑い夏の幕張。
第十回:物欲と金銭状況の均衡。
第十一回:拠点を変えてみるという選択。
第十二回:全力で応えるのは敵意ではなく好意でありたい。
第十三回:競技よりも色濃い、発掘された石の記憶。
第十四回:爪作家と名乗る理由。
第十五回:配色という名の遊び。
第十六回:夢のような夜明け。
第十七回:苗字が変わることで救われる人もいる。
第十八回:自分に課した楽しみでさえも逸してみる休日。
第十九回:服の影に見惚れたこと。
第二十回:体の操縦。
第二十一回:根拠のないおまじない。
第二十二回:なんてことない場所でも楽しいと思えることを誇ろう。
第二十三回:自分に合うという感覚を大事にする。
第二十四回:ダミ声の猫。
第二十五回:公にしなくてもいいという親心。
第二十六回:成長を祝うおせち。
第二十七回:続く人とは続くでしょう。

第二十七回:続く人とは続くでしょう。

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